「髪をショートにしようと決めたのは、秋のVERYフェスでの写真を見たとき。モデル全員が舞台上に並んだら〝こんなにボブ率が上がっていたんだ〟と。ひとつの雑誌にいろんな役割のモデルがいたほうがいいし、ならば私が切ろう。そう思ったんです」と畑野さん。母として、モデルとして、女性として、〝潔くて、やさしい〟。彼女の新しいスタートに立ち会いました。
「ショートカットになった自分を私自身が見てみたかった」
<中略>
「本格的なショートカットにするのは中学2年生ぶり。その頃は、バレーボールに夢中のバリバリの体育会系。そっけないただただ髪の短い、男 の子みたいな女の子だったと思います。あれから30年弱が過ぎ、顔も変わるし、体形も変わるし、10代でしたときとは絶対違う。いろいろなこと があって、今がある。今の私がショートカットになったら、どんな風になるんだろうって。誰よりも私自身がショートになった新しい自分を見てみたかった気がします。ボブもいい意味で定着していたけれど、定着しきってしまう前に変化することも、いいことなんじゃないかなと。
似合うかわからない不安もあったけれど、決めてからも切っている間も、その気持ちよりワクワクが先行。私がイメージしていたのは、20代前半に買った、とある雑誌のカバーをしていたスーパーモデルの〝ヘレナ・クリステンセン〟。とても可愛くて大好きだったので、何度となく荷物を整理していても、この雑誌だけは捨てられずに大事に持っていました。いつかこんな大人になりたい。こんなショートカットにしてみたいと、ずっと頭の片隅にショートへの憧れがありました」
「“変わったね〟。 よくても悪くても反応があることが、 考え直すきっかけにはなる」
「髪を切ってから、ファッションにもメークにも、アンテナの張り方が変わりました。帽子ひとつとっても、似合う形もかぶり方も変わるし、メークもやっぱり変えたくなる。〝切ったんだね〟〝変わったね〟と言われることも、いい刺激になっています。反応があることってやっぱり、考えるきっかけをくれるから。例えばメークでも、1点にポイントを持ってくるメークも似合いそうだねと言われたので、さっそく赤のアイラインに挑戦。ボブの時は考えもしなかったアイデアですが、その試行錯誤が楽しい。
<中略>
実は今年でモデルになって25周年。その節目の年に、偶然にもVERYフェスでの出来事や生徒さんからの声や、いろいろなタイミングと縁が重なって、背中を押されたことも、すべてが〝切るなら今〟だったのではないかと思っています。たとえば失恋で髪を切るのって、終わるからじゃなく、新しいスタートを切るためなんじゃないかなと思うんですが、そういう気持ちと似てるのかな。トライ&エラーを繰り返して、今のステー ジの自分らしさを追求するのも悪くないなって思います」
撮影/渡辺謙太郎〈MOUSTACHE〉(モデル)、中田陽子〈MAETTICO〉(ヘアカット風景)スタイリング/竹村はま子 ヘア・メーク/TOMIE〈nude.〉 モデル/畑野ひろ子 取材・文/塚田有紀子 編集/澤辺麻衣子
※VERY 2018年2月号「ショートカットへ。止まらない、彼女の変化がまぶしい 畑野ひろ子さん42歳の決断」より。
※掲載中の情報は、誌面掲載時のものです。