SNSを中心に大反響を巻き起こした漫画『東京最低最悪最高!』作者の鳥トマトさんと、テレビ局で働きながら描いた赤裸々育児エッセイ漫画『正しいお母さんってなんですか!?』が話題の真船佳奈さんが対談。VERY本誌にも登場いただいたお二人に、育児のこと、仕事や夫婦関係のこと、今の思いをとことん語り合っていただきました。
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雑誌『VERY』に出て気付いたこと
──お二人には昨年から今年にかけて、それぞれ『VERY』にもご登場いただきました。誌面では、二人とも現在子育て真っ最中ということで、育児とキャリアの狭間で葛藤するリアルな本音を語ってくださいましたね。
真船さん(以下、敬称略):その節はお世話になりました。私は友人から「VERYの取材を受けるなら、自宅にあるありったけの貴金属をすべて着けていくくらいの気持ちで臨め!」と言われ、気合いを入れて現場に伺ったことを覚えています。
ただ、実際に取材を受けるまでは、『VERY』は、仕事も育児も完璧なお母さんたちが読むファッション誌だと感じていたので、「私なんかが出ていいの?」と恐縮していたのですが、取材を受けてみたらそうじゃない。頑張っているすべての女性を応援しようとする雑誌なんだと、イメージが変わりました。
鳥トマトさん(以下、敬称略):僕も「朝、起きた瞬間から完璧に美しい母のための雑誌」をイメージしていたのですが、最初から完璧な女性などおらず、みんな陰で努力をしながら、「こうありたい理想」を目指しているんだな、ということが実際に取材を受けてみてわかったんです。白鳥は一見、優雅に見えますが、水の下では一生懸命に足を動かしているのと同じですよね。『VERY』の読者さんも、僕と同じように悩みを抱えながらもがいているのかと思うと、なんだか安心しました。
漫画家・真船佳奈さん(左)と鳥トマトさん(右)
母を尻目に、息子たちはしっかり者に育っています
──お二人のインタビューでは、育児中のエピソードも印象的でした。「掃除が嫌い。そして多忙すぎて、布団のなかから手羽先の骨が発見された(鳥トマトさん)」「保育園イベントで自分だけ泥酔(真船さん)」など親近感が湧くエピソードだらけで……。
鳥トマト:「布団から手羽先」は、息子が3歳頃の話ですね。今は5歳になって、日常生活もだいぶ落ち着いてきましたし、私が多忙ゆえに大きくやらかす前に、息子が私をフォローしてくれるようにもなってきました。
──お二人の息子さんたちは、お母さんのお仕事のことを、もう理解されているのですか?
鳥トマト:知っていると思います。僕はこの通り、仕事では顔出しせず、鳥のかぶりもので人前に出ており、「その姿、息子さんに見られても大丈夫ですか??」と担当編集さんに心配されたことがあったので、戦々恐々としていたのですが……。良くも悪くも息子は受け止め方がフラットなんです。「仕事のときは鳥になるんでしょ? そういうの好きだもんね」みたいな感じで、ものすごくドライでした(笑)。母のことも、母の仕事のことも、よく理解してくれているようです。
真船:我が家の息子も私の漫画を見て「これ、あっくんのことでしょう?」と言ったりするので、だいぶ理解が追いついているんだと思います。我が子はまもなく4歳になりますが、たしかに最近、しっかりしてきましたね。私が寝坊をして、子どもが先に起きると、「ママ、起きる時間だよ」と起こしに来てくれることも多々。でも、それが休日で「もう少し寝ていたいんだけどなぁ」なんてときには、私から息子に「冬眠ごっこ」を持ちかけて二度寝をしています。
息子を布団の中におびき寄せて、二人で親子熊になるんです。「まだ春じゃないんだよ~子熊さんも、もう少し冬眠していようね」なんて布団の中でくっついているうちに、いつの間にやら息子も二度寝をしてくれるんです。ほかにも、「あっくん、ちょっと布団のなかで抱っこさせて」と呼び寄せて、「大好き、可愛いね」と言いながらトントンすると、また寝てくれることも。最近では、こうして母は二度寝に成功しています。
鳥トマト:意地でも起きないお母さん! それ、いいですね。
真船さん:息子の記憶には、朝起きると母が「大好き」と言いながら抱きしめてくれた思い出が残るような気がするし、私は二度寝ができるし、一石二鳥(?)です。
「自分の人生は終わった」と涙した日も
──夫婦での家事や育児の分担や、育児とキャリアとの両立に関して、「試行錯誤してみたけれどうまくいかず、日々の生活で精一杯」と、翼をもがれたワーママも多いのが現実です。「今の日本じゃ無理だよね」とあきらめムード漂う意見も少なくないのですが、当事者真っ只中のお二人は、どう感じていますか?
鳥トマト:僕は今33歳なのですが、この年になって周囲では、パートナーの転勤や子育ての都合などで思うように働けず、これまで続けてきた仕事を辞めたり、ペースダウンする女性も増えたように感じています。それで自宅にいる時間が長くなった妻が家事や育児を主に担うようになると、分担なんてことを夫に提案しにくい状況が生まれ、悶々としながらも自分のキャリアをあきらめるスパイラルに突入しがちです。
分担がうまくいっていないと感じるならば、夫婦での話し合いをして軌道修正することが大切なんでしょうが、多忙な日々の中ではそれすらもなかなか難しいんですよね。でも、人生はまだまだ長い。子どもが小さな頃にいったん仕事を中断したとしても、必ずや、またどこかでカムバックできる気がします。僕も去年、漫画の仕事との兼業に限界を感じ、会社員をドロップアウトした身なので偉そうなことは言えませんが、あきらめない心を持って、ぜひ共に頑張りましょう、と言いたいです。
真船:私もその葛藤は身をもって感じています。うちは夫婦ともに会社員の共働き世帯なのですが、産後は私ばかりが我慢しているように感じる場面も多かったです。子どもが生まれても変わらず、今まで通り仕事優先で激務をこなす夫を見て、「私は自分の人生をあきらめて母親業に徹するしかないのに、なんで……」と、悶々としたことを今でも覚えています。
──産後は特に不公平感を感じやすい時期かもしれませんね。
真船:夫に「私だってもっと働きたいよ」「なんで私ばかり我慢しなきゃいけないの?」と泣きながら詰め寄ったことも一度や二度ではありません。結局、息子が3歳になる年に、「この3年間は私が育児をメインでやってきたので、これからの数年は、私が働く番にしよう」と夫婦で話し合い、夫には比較的、早めに帰りやすい部署に異動してもらいました。ここからの数年は「私が全力で働く」と、夫婦でバトンタッチしたんです。
鳥トマト:なるほど。それは新しい夫婦の在り方かもしれませんね。夫婦で都度、話し合って、役割を交代していくのは名案だと思います。
感情をChatGPTにぶつけてから、夫婦の話し合いを
真船:我が家の場合は、夫の方が当日になってみないと残業の有無がわからない環境だったため「週に2日は夫が保育園にお迎えに行く日」といった日付で分ける分担方法だとうまくいかず、結局、私のほうが家事育児のボリュームが増えてしまいがちだったんです。だから、数年単位で役割を決める形にしたことで、今のところはお互いに納得できています。環境的にそうできないご家庭も多いかもしれませんが、どちらかが一方的に我慢するのは、やはりお互いにとってもよくないと思うんです。
鳥トマト:「自分のキャリアのことで子どもが犠牲にならないように」と我慢する女性も少なくありませんが、そこであきらめたら夫婦関係も終了しかねません。それに、子育てにがっつりコミットする期間があることは、男性にとってもいいことだと思うんです。仕事にばかり没頭して子どもと過ごす時間が少なく、我が子に懐かれないというのもちょっと切ないですもん。
──家庭によってさまざまな形があってしかるべきだとは思いますが、まずはお互いに本音をぶつけて、夫婦で話し合うことが大切ですね。
真船:ただ、感情的になってしまうと話し合いも建設的にならないので、私は最近、まずはChatGPTに不満をぶつけるようにしています。夫との話し合いは”チャッピー”に吐き出してから。“チャッピー”に優しく話を聞いてもらって、いったん言葉を整理してから夫に提案をすると、感情を直にぶつけるよりもスムーズに話し合いができるんですよね。我が家の夫も、妻の不満のサンドバッグにならずに済んでいるので、チャッピーにはものすごく感謝していると思います。
鳥トマト:そんなChatGPTの使い方、初めて聞きました。アリですね!
Profile

真船 佳奈さん
1989年生まれ。夫と3歳男の子の3人家族。大学卒業後、2012年に株式会社テレビ東京入社。テレビ東京ではバラエティ番組のAD等を経て現在はプロモーション部で働きながら、子育てをテーマにした漫画家として活躍中。(撮影/杉本大希)
『正しいお母さんってなんですか!? 「ちゃんとしなきゃ」が止まらない! 今日も子育て迷走中』(幻冬舎)
真船さんが「正しいお母さん」像に翻弄されながらも自分らしい子育てにたどり着くまでの育児漫画。ちゃんとしなきゃと苦しい思いをしている全お母さんに読んでほしい一冊。
『さよなら!行き当たりばったり人生! お金管理も家事も全部ニガテな主婦の生まれ変わり奮闘記』(KADOKAWA)※2026年3月26日発売予定。
お金の管理も苦手、片付けも苦手。豪華な暮らしでも丁寧な暮らしでもなくていいけれど、不安やイライラのない生活を送るための、等身大のノウハウが詰まった本。
Profile

鳥トマトさん
漫画家・小説家。これまで手がけた作品に『俺のリスク』、『アッコちゃんは世界一』、『幻滅カメラ』、『歴史メンタリスト』など。現在「まんがライフオリジナル」にて漫画『私たちには風呂がある!』、「ヤングアニマルWeb」にて漫画『二月に殺して桜に埋める』「週刊SPA!」にて小説『まだおじさんじゃない』を連載中。一人称は「僕」。夫と5歳男の子の3人家族。
『東京最低最悪最高!』(小学館)現在①~③刊発売中
「ビッコミ」にて、驚異の100万PV! 超絶バズ&大論争を巻き起こしたオムニバス漫画。限界ワーママ、非正規雇用のシングルマザー、仕事と家庭の板挟みになる管理職……このなかにきっと自分に近い人がいるはず……。令和の東京残酷物語。
構成・文/小嶋美樹 取材協力/本屋B&B









