FOLLOW US

  • 今日のコーデや撮影オフショットを毎日更新

    @veryweb.jp

  • オリジナル動画コンテンツを配信中!

    YouTube

  • 週3回VERY的トレンドまとめを配信中♪

    @oa-veryweb

  • 限定プレゼント情報も♡

    @VERY_web

  • VERYWEBの最新記事をチェック

    @veryweb.jp

子どもの「早生まれって、損じゃない!」専門家が改めて伝えたいこと

2025/11/216_SNS.jpg

「うちの子は早生まれだから……」。育児中のママからよく聞くこんな言葉。保育園入園やお受験、就学後の生活も、“早生まれだから不安”という声も。でも、話題の「早生まれ育児本」著者・脳科学者の瀧靖之先生によると「早生まれの子の生活環境は、脳科学の視点で見ると非常にプラスな面がある」そう。早生まれって本当に“損”なの?改めて「早生まれ」育児について考えてみました。

「早生まれ育児本」が話題!瀧 靖之先生インタビュー
早生まれ育児のキーワードは「脳の可塑性」大切なのは“自己肯定感”を育てること

その子ならではの「得意分野」を
見つけてあげるといい

2020年に発表された論文※をきっかけに「早生まれは将来の学力や年収に影響する可能性がある」という話がメディアで話題になりました。ただ、これだけで「早生まれは損だ」と結論づけるのは早計です。論文でまず注目したいのは、「早生まれの子は本当に損なのか」という話の前に、生まれ月による差が自己肯定感の差にもつながりやすいということです。
「自己肯定感が大事」とは近年よく言われることですが、実際に自己肯定感の高い子ほど能力が高い傾向にあることが数々の研究で明らかにされています。早生まれの子は、同学年のほかの子どもとの成長差からどうしても周囲と比べて「自分はできない」と思いがちです。
そこで、自己肯定感をどう保つかを意識すれば「早生まれが不利」は挽回できるとも考えられます。学力面においては、高校生〜大学生になるまでの間に、学年の中で遅生まれと早生まれの差がほとんど改善されていたというデータもあります。身体面は、もっと早く追いつきます。小学校受験を考えていて不安という方もいるかもしれませんが、生まれ月によって配慮のある学校もあります。
どうせいつか追いつくのであれば、今、周囲と比べてあれもこれもできないと焦るより、得意分野を見つけ、自信を持たせることのほうが子どものためになるはずです。とはいえ、勉強ができる子、運動が得意な子ならいくらでも上がいます。でも、いろいろなタイプの友だちがいるとか、ある分野にとても詳しいとか3つくらいの要素を掛け合わせると、その子だけの強みになります。
それを見つけてあげられるのは、近くで見ている親御さんだからこそ。私の子も3月生まれですが、彼なりの強みを見つけてあげることは強く意識しました。

2025/11/216_1.jpg
※Month-of-Birth Effects on Skills and Skill Formation

早生まれは
「脳を鍛えるチャンス」が人より早い

得意・不得意は生まれ持ったものよりも経験や効率の差が大きいと言われています。例えばピアノは、きちんと練習さえすれば80歳、90歳になっても上達します。脳には「可塑性」と言って、外部刺激により変化し、脳自体を進化させる性質がもともと備わっているからです。可塑性自体は、年齢を重ねても存在しますが、より若ければ若いほど高く、脳への刺激が効果的であることもわかっています。早生まれの子はほかの子よりも早い段階で集団生活がスタートしますが、これは脳の機能的な側面からみれば非常にプラスです。早生まれの子は「脳を鍛えるチャンス」に恵まれているとも言えるのです。脳科学的な視点では、親子で一緒に取り組める習い事もおすすめです。親子が行動を共にし、ポジティブな会話が増えると子どものIQが向上するなど「親子の習い事」が脳に良いという複数の検証結果があります。我が家の場合は、親子でピアノを習い、一緒に発表会に参加しています。

「これからの時代を生きる力」が
身につきやすい環境

「うちの子は周囲と比べ、苦手なことが多くて……」と言う人もいるでしょう。でも、人と比べて落ち込むよりも、「苦手なことを周囲にどう助けてもらうか」と切り替えられるほうが大事です。これまで研究やビジネスにおいて、非常に優秀な人ではあるけれど人の力を借りるのが苦手でうまくいかないという場面を何度も見てきました。これからの時代、人の助けを借りる「受援力」は、生き抜くための大きな力になります。集団生活のなかで、周囲の人からサポートされる機会も多く、この受援力が自然と身につきやすい環境にあるのが早生まれの子。少しだけ早く生まれた子と一緒に学び、生活する。早生まれならではの環境を活かさない手はありません。

教えてくれたのは…

東北大学加齢医学研究所教授瀧 靖之先生
東北大学加齢医学研究所教授
瀧 靖之先生

医学博士。東北大学スマート・エイジング学際重点研究センターセンター長。著書に『16万人の脳画像を見てきた脳医学者が教える「賢い子」に育てる究極のコツ』(文響社)など。

本当はすごい早生まれ
(瀧 靖之著 ¥1,650/飛鳥新社)

脳科学者が、「早生まれは不利」という常識を科学的に覆す「早生まれ育児本」。

文京区立お茶の水女子大学こども園元園長
宮里暁美先生に聞く

「生まれ月」よりも意識したいのは、その子の「長所」を見つけてあげること

早生まれ育児中のママたちに聞きました
「これって早生まれだから?」と育児悩みをすぐに結び付けてしまいがちです。

・Y.Sさん(8歳2月生まれ男の子のママ)
早生まれの子は体が小さいイメージがありますが、うちの子は大柄。それでも行動には幼い面が多くあり、そのギャップにとまどうことも。「早生まれだから仕方ないのかな」と思いつつ、いつになったら心と体の成長の差が縮まるのだろう……と不安な気持ちに。

 

・N.Nさん(9歳3月生まれ男の子のママ)
勉強やスポーツなど、「人より苦手」が多い息子。本人なりに頑張っている様子ですがなかなかほかの子に追いつけません。生まれつきの得意不得意や特性もあると思いますが、どうしても「早生まれのせい」だと考えてしまいます。

 

・K.Nさん(7歳3月生まれ女の子のママ)
体が小さく、そのせいか、運動に苦手意識があって引っ込み思案でインドアな娘。元々の性格と頭でわかっていても、列から遅れてトボトボと歩いていたり、休み時間も友達と関わらずに過ごす様子から「早生まれだから?」と思ってしまうことが。

2025/11/216_2.jpg
※Month-of-Birth Effects on Skills and Skill Formation

子どもたちは“早生まれかどうか”
そんなに気にしていないの

保育・幼児教育の現場で、長年たくさんの子どもたちを見てきました。0歳クラスは、月齢による違いがもっとも大きいですが、2歳頃になって歩行が安定したりおしゃべりができたりするようになると、生まれ月以外のそれぞれの個性や、発達の特性が見えてきます。そこで、保育者は生まれ月より、その子の個性を見るようにしています。きょうだいの有無などを知っておくのと同様、何月生まれかは把握していますが、あくまでその子を知るための情報の一つとして捉えているのです。子どもたちも、自分や相手が「早生まれかどうか」を意識する様子はありません。
保護者から「うちの子は早生まれだから、まだ〇〇ができなくて……」と相談を受けることは確かにあります。でも、幼児期は一人一人みんな違って当たり前。少しずつ経験を重ねることで皆、確実に成長しているので促成栽培のように急かす必要はありません。むしろ、早く成長している子のペースに無理に追いつかせようとすることで、子どもが自信を失くしてしまうことのほうが心配です。
特におっとりしているタイプのお子さんは、集団生活で受ける刺激に疲れてしまうこともあります。周りの子と同じように過ごすための努力は、園でじゅうぶん経験できています。だからこそ、家ではゆっくりと、その子なりのペースで過ごさせてあげてください。好きなことで遊ぶのはもちろん、料理のお手伝いなどもいい経験になると思います。そのなかで小さな成功を積み重ねていくと、いつか必ず力を発揮するタイミングが訪れます。我が子だけ見ていると、なかなか成長は実感しづらいかもしれませんが、祖父母や地域の人など、親以外の大人の目を通すとお子さんの思わぬ成長に気づくはずです。
以前、ある早生まれのお子さんの成長に驚いた経験があります。Aくんは失敗するのが苦手で緊張しがちだった子。卒園後に近隣の小学校に進学したのですが、彼が高学年の時に学芸会に招かれ、見学する機会がありました。するとあの引っ込み思案だったAくんが、講堂に響くような大きな声で、主役級の役を演じていたのです。経験を重ねることで、こんなに成長するのだと実感しました。
特に初めてのお子さんだと心配なことも多いかと思いますが、何百人もの早生まれの子を見てきた上でお伝えしたいのは、その子なりの成長を見守ってあげればきっと大丈夫ということです。

教えてくれたのは…

国立大学法人お茶の水女子大学アカデミック・プロダクション特任教授宮里暁美先生
国立大学法人 お茶の水女子大学
アカデミック・プロダクション 特任教授

宮里暁美先生

文京区立お茶の水女子大学こども園元園長。長年、保育の現場や保育者育成に従事する。著書に『「やりたい」を引き出す!宮里先生の子どもが伸びる育児のレシピ』(講談社)など。子ども3人。

撮影/坂田幸一 取材・文/樋口可奈子 編集/髙田翔子 撮影協力/オーダーケーキ&センイルケーキのお店・エスキィス
*VERY2025年11月号『改めて伝えたい「早生まれって損」じゃない!』より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。

この記事もおすすめ

MAGAZINE