母になると、自分のことをつい後回しにしてしまう。そんななか誰しも、「好きなこと」が活力になっています。今回のゲストは山本美月さん。幼少期に憧れたキャラクターをきっかけに、今もアニメの世界に魅了されているそうです。

モデル・俳優 山本美月さんは……
アニメが好き！

❝ 変身できる魔法少女に
今も昔も憧れているんです❞

シャツ￥30,800ベアトップ￥41,800（ともにハイク／ボウルズ）シングルピアス各￥66,000ネックレス￥594,000（すべてシハラ／シハラ トウキョウ）

幼いころからアニメが大好きでした。きっかけは『美少女戦士セーラームーン』。周りを翻弄しつつも圧倒的主役感を放つ、月野うさぎ扮するセーラームーンに憧れたものです。リアルを描くテレビドラマより、心惹かれたのはアニメによるファンタジー。中でも、魔法少女は特別でした。私の中での魔法少女の定義は変身する女の子のこと。現実世界では起こり得ないコスチュームチェンジは夢があって、その影響で「将来の夢は？」の質問に、幼いころはいつも「スチュワーデス！警察官！」と制服のある職業を答えていました。モデルという今の仕事にも、何かしら通ずるものがあったのかもしれません。自分が“オタク”であることを自覚してアニメ愛が加速したのは、忘れもしない小学校6年生の卒業前。中学受験に向けて漫画もアニメもテレビも遠ざけていた日々から解放された反動で、一層のめり込みました。高校生になると、友人がカラオケでモーニング娘。を歌うなか、私はアニソンを熱唱（笑）。今思えば、異性の目を気にして取り繕う必要がなかった女子校という環境が本当に好きなことを後押ししてくれたのだと思います。

18歳で受けたオーディションがきっかけでモデルになったものの、当時は“モデルがアニオタ”であることが世間にどう捉えられるかという周囲の不安もあり、アドバイスを受けてしばらくはアニメ好きを封印。けれどある時、お世話になっていた雑誌の編集長が「面白い！」と興味を持ってくださり、声を大にしてアニメが好きだと言えるようになったことが今に繫がっています。母になり、もうすぐ2年。何かに没頭できる時間が圧倒的に足りません。以前は食事も忘れてアニメを観るなんていうこともあったくらいですから。今は不意にひとりの時間ができたときや、夫が子どもをみてくれているときに一人、アニメの世界に没頭しています。最近は「ながら観」も日々のルーティンに。夕飯を作りながらiPad内のアニメに気を取られていると、そんなに得意ではない料理がぐんぐん進むことに気づきました（笑）。億劫な家事もアニメをお供に乗り越えています。

4月より独占配信されるHuluオリジナル『おとなになっても』で演じるのは、既婚者でありながら一人の女性に惹かれていく大久保綾乃役。観る人によっては綾乃ちゃんは一番嫌われてしまう人かもしれませんが、何事も深く考えてから言葉にする彼女に、私はむしろ嘘をつかない誠実さを感じながら演じていました。自分がどんな境遇でも、誰かに惹かれる瞬間はあると思います。

今の私にとって、それは子ども。大雨の今日（撮影当日）も保育園まで歩いてくれず、抱っこして傘をさしてしんどい思いもしたけれど、“道端でそんなところ見てるんだ”“友達の名前を呼んでてすごいな”と感動が毎日上書きされます。知らない世界に気づかせてくれる、大きな引力を持つ存在です。最近は子どもが大好きな『パンどろぼう』に私も一緒になって絶賛ハマり中。つい“おいしい”を「うまい！」と表現してしまうほど（笑）。これからはアニメさえも子どもが幅を広げてくれると思うと、楽しみで仕方ありません。

撮影／佐藤航嗣〈UM〉　スタイリング／荒木里実　ヘア・メイク／佐川理佳　取材・文／藤井そのこ　編集／鈴木貴子
＊VERY2025年5月号「オトナになっても好きなこと」より。
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