子が増えれば増えるほど計画、予約、移動まですべてが大仕事な子連れ旅。子ども3人以上が泊まれる部屋は少なくチェックインは15時、リフレッシュするはずがかえって疲弊…。今回はそんな現状にSHELLYさんと原田夏希さんが、星野リゾート代表・星野さんへ直談判トーク!
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「3人子連れ旅」を
心から楽しめる時代は来ますか?
【SHELLYさん】ブルゾン¥25,300ニット¥14,300サロペット¥23,100(すべてアウラアイラ/コードナイン)ピアス¥17,600右手リング¥19,800左手リング¥6,600(すべてアガット)ブレスレット¥18,700(ノジェス)シューズ¥19,800(ダイアナ/ダイアナ銀座本店)
家族旅行まで“一姫二太郎神話”
に絡め取られてる…!?
SHELLYさん(以下 SHELLY):子ども3人が大きくなれば、一般的なホテルに泊まろうと思うと部屋を2つ取るしかなくなってしまって。コネクティングルームはなかなか空きがないし、3人目を産んでから旅行しづらいと思う場面が増えました。
原田さん(以下 原田):予約するとき1部屋に子ども3人だとそもそもネットで入力できなかったり、該当部屋がヒットしないことが多いですよね。なので、ホテルへ直接電話をして予約するようにしています。添い寝できる人数が大人1に対して子ども1の場合もありますよね。
SHELLY ネットで完結せず毎回電話で確認になるのが地味に大変。なんで子ども2人前提なのかなって。
編集部:「一姫二太郎神話」ではないですが、「家族=大人2人と子ども2人」というイメージが根底にあるのかもしれないですね。また、どこの国でもひと部屋あたりの人数は消防法で決まっているものですが、韓国ではオンドルのような布団敷き部屋が子どもの増減に寛容だったり、欧米ではキッチン付きのレジデンスが豊富だったりと選択肢が多いイメージがあります。
星野さん(以下 星野):皆さんのおっしゃるとおり、子ども3人以上の家族旅だけでなく三世代旅、友人家族との団体旅などニーズは変化しているのに、ホテル側の問題で対応が遅れている現状はあると思います。弊社でも多人数部屋を増やしましたが、需要過多なので稼働率は高いです。
原田 星野リゾートはアクティビティも充実しているイメージ。子連れはホテルから出かけるのは大変なので施設内で完結するのはありがたいんです。
❝計画、準備、移動だけで疲労困憊ですーーSHELLYさん❞
星野 日本で温泉が強いことは周知の事実ですが、温泉のない八ヶ岳を再生するとき強く感じたのは、親子連れにとってプールはキラーコンテンツなんですね。
SHELLY それ私たち母は、全員知ってます(笑)!
星野 子どもは夢中になるし、ちゃんとクタクタになってくれますよね(笑)。いっぽう冬の集客は課題でしたが、八ヶ岳は無料でスキー道具の貸し出しをして、デビュー組に好評です。子連れ旅で「のんびり何もしない」のは無理だから、親は出先で子どもを楽しませるのに大変な思いをするわけです。その一部をホテルが担当すれば親が楽になる。そんな需要があると気づき、大人と子どもの食事を分けるサービスも設けたのですが、実はそれは人気がなかったんです。
原田 確かに、旅先では「家族一緒に過ごしたい」気持ちが強いかもしれません。食事はなおさら。大変なんだけど、そこは家族一緒に食べたい。旅行は時間の共有だと思っていて。普段忙しく過ごしている分せっかく全員が集まるときだから、という気持ちがありますね。写真を撮って後で一緒に見返すのが子どもの成長にとってもすごくいいと聞き、しょっちゅう見返したりしています。
星野 そういう写真を見たくなくなったら反抗期ですよ。我が家は凄まじかったので(笑)。例えばリゾナーレでは、キッズスタジオのシェフ体験などで数十分預かり親がブッフェを楽しめたりするものは反響が良かったです。お子さんを預かるにしても日本では「託児」的なイメージだとダメで、預けることで子どもが何か上達したり普段できない経験ができる要素があると、親の抵抗感が減るんだと学びました。スキーやスノーボードが上手くなって帰ってくると思えば、急に預けやすくなるようです。
❝託児ではなく何かを経験できると「預ける抵抗感」が減るーー星野さん❞
SHELLY 海外のリゾートでは、キッズクラブに入れて親はゆっくりするのが一般的ですよね。でも日本の親はどうしても「旅先で子どもを預けるのが申し訳ない、一緒に遊んであげなきゃ」と思ってしまいがちなんだと思います。預けるといえば、いま周りのママ友の間で、お預かりで自然体験をさせてくれるプログラムが流行っているんですよ。ガイドさんと一緒に自然探検をして朝9時から14、15時まで参加してくれるので。確か軽井沢とか知床でも…。
星野 それは私たちがネイチャーツアーをしているピッキオですね。
SHELLY そうでしたか!
星野 例えばドラム缶に水を入れて木で火を起こして4時間かけてお風呂を沸かすとか。それだけでお湯を沸かすってこんなに大変なんだ、と実感できます。
原田 周りでもピッキオに行っている友人が多くいます。夏休みの課題もはかどるようで。少しでもパパママが楽できるかもしれませんね。また、3人子連れ旅でつらいのは、例えば受付をしている最中にロビーで騒いで「すみません!」となることです。でもそんなときホテルのスタッフの方がジュースあるよと言ってくれたり、ご飯の時も人の少ないところに案内してくれたりすると本当に救われます。やっぱりブッフェ形式だと気を使わなくて楽。
星野 子どもは食事が終わるのが早いですよね。だから託児はないにしても、子どものみ参加のプログラムなどでお預かりして15分だけでもひとときの平和を作り出すということをしています。
SHELLY その15分が大事なんですよね!海外で見て日本でも作ってほしいと思ったのは、大人エリアとファミリーエリアが分かれていて、かつブッフェの横に公園みたいな遊具があるんです。早々に食べ終わって遊ぶ子どもを見ながら、ゆっくりコーヒーが飲めるという。だけど私、最近は友人や親戚家族と出かけることが多いので、実はホテルではなくバケーションレンタル利用が多くなってきていて。夜おつまみを用意するにもキッチン付きは便利だし、大人数で泊まれるし何かと自由度が高いんです。
原田 そうなんですね。私旅行に行ったときくらいはお湯すら沸かしたくないから、コーヒーもロビーでもらえるホテルがやっぱり好きです(笑)。でもそんなふうに上げ膳据え膳がよければホテル、自由度が高いほうがよければバケーションレンタルなど、選択肢が増えれば増えるほど子連れ旅をもっと楽しめますよね。
❝子3人はネット予約しづらくいつも宿へは直接電話が基本ーー原田さん❞
星野 うちもOMOブランドの一部施設で展開しているホテル内にバケーションレンタルにあるような、キッチン機能が付いた「OMOハウス」を充実させようとしているところです。社内では僕が提案することの大半は過激だと最初は否定されるのですが、やっとスタートしたことがもうひとつあります。例えば家族旅の方って、なぜか部屋ができていない朝10時からホテルに来るんです。
皆 (笑)。
星野 チェックインは15時と伝えているのに朝来て、遊び始める。チェックアウトしても17時まで遊んでいる。
SHELLY はい、その通りです(笑)。旅行の準備だけで大変なので近所でひと遊びしてからなんて余裕もないし荷物も多いし移動だけでも疲れるし…で、結局朝出発して午前到着。15時チェックイン、遅すぎる~!っていつも思ってます。チェックインまでどうやって時間をつぶそうか途方に暮れます。
星野 そこに対応したいと思っています。10時に来て、滞在できるセカンドルームを基地としてアクティビティに参加できるようにして。
SHELLY 海外テーマパークのリゾートでもありますね。
星野 1施設でスタートしたところすごく好評で。他の施設でも展開したいと僕は思っています。
原田 朝到着してそこを拠点に遊べたら楽ですよね。丸々ホテルを堪能できますし。
星野 ホテル側にとってもアクティビティに参加してくれたりするので、実はありがたいんです。また磐梯山温泉ホテルでは冬季のチェックアウトを14時にしたところ最終日の午前丸々滑れるようになったと好評です。2時間で清掃しないといけないので、仕組み作りはすごく大変でしたが。海外のデータですが、家族旅行に子どもの頃から連れ出された人は、大人になっても旅行を続けるというデータがあります。人口減少の中で、将来の旅行市場を作っていくためには今から家族旅行を経験してほしい、と思っています。
SHELLY
1984年生まれ、神奈川県出身。14歳でモデルとしてデビュー以後、タレント、MCとして幅広く活躍。9歳・7歳・2歳を子育て中。
原田夏希
1984年生まれ、静岡県出身。2004年のNHK連続テレビ小説『わかば』の主人公を演じる。7歳・5歳・3歳を子育て中。
星野佳路
1960年長野県生まれ。星野リゾート代表。「星のや」「リゾナーレ」「界」「OMO」など人気のホテルブランドを多数展開。
撮影/須藤敬一 ヘア・メイク/Hitomi〈Chrysanthemum〉(原田さん)、高橋純子(SHELLYさん) スタイリング/野田さやか(SHELLYさん) 取材・文/有馬美穂 編集/中台麻理恵
*VERY2025年5月号「3人子連れ旅を心から楽しめる時代は来ますか?」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のもので、変更になっている場合や商品の販売が終了している場合ございます。