ここ数年、SNSを中心に巻き起こる空前の短歌ブーム。子育て中の今しか表現できない想いを込められるとママたちの間でも話題に。今回はVERYのママスタッフの短歌をご紹介します。
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清い舌 トマトに触れて ビビビって
これがトマトだ 生きていくんだ
ーVERYライター・藤井そのこ
息子が2歳になった今も頻繁に見返す動画があります。それは生後7カ月、初めてトマトを食べたときのもの。人生初のトマトは思いも寄らぬほど酸っぱかったようで、雷に打たれたようにビビビと震え上がっていました(笑)。これから沢山の“初めて”を経験し、記憶に刻まれ、生きていく。そんな子どもの逞しさも希望も、短歌に込めてみました。層を重ねてゆく過程がこれから始まると思うと、羨ましくもあります。けれど同時に、母になった自分はこの子のおかげで初めてのことを一緒に経験できる機会をもらえたことも実感しています。
99万のバッグを流し見た
肩にトートの跡を描いて
ーVERYライター・藤井そのこ
2022年の晩夏。6月に生まれたばかりの息子を抱っこ紐に入れて、なくなった化粧水を買いに某店へ行きました。“もしも”を想定した私のトートバッグはクッションみたいに膨れ上がって、ノースリーブの肩にはトートバッグの細い紐が食い込んでいました。そんなとき目に入ったのは、入荷したばかりのレザーのバッグ。街中で素敵な女性が颯爽と持っていたあのバッグです。同時に「先月99万円に値上がりした」と聞き、“検討”の2文字が脳内から消え去りました。買えたところで当時の私には持っていく場所がないんですけど……。相棒は、汚れても、床に置いても気にならない青のトートバッグ。でもそれが今の私であるし、洗えて便利なお気に入りです。子の成長とともに自由を手にしていくけれど、紐の跡さえも懐かしく思う日が来るんだろうなあと思います。
「息継ぎはコツがあるんだ」
いつの間にか教えるほうになっている腕
ーVERY編集・髙田翔子
息子が乳幼児のころ「まだ言葉をしゃべらない」「まだ歩けない」「まだおむつがとれない」。ほかの子はもうできるのに……。比べない、気にしないと頭ではわかっていながらも、何度やきもきしたことでしょう。けれどいつの間にかできることが増えていって、私が苦手なことだって息子はこなすようになりました。今では、私が教えるよりも息子に教えてもらうことが少しずつ増えていることに驚きます。小児ぜんそくをきっかけに始めたスイミングもずいぶん上達して、泳げない私にコツを教えてくれるけれど、私はやっぱり息継ぎができないままです。
「こんなこと許せないよ」
という君にも いつか秘密をもつ夜がくる
ーVERY編集・髙田翔子
連日続く政治家や芸能人の不祥事。「どう思うの?」と息子に聞くと、「ありえない」と言います。その通り。でもいつかきっと、息子にも何かしらの嘘をつく日、小さな不正をする日、それがバレる日が来るんだろうと思います。1人では抱えられないほどの秘密を持つこともあるかもしれません。そんなとき私はつっぱねてしまうのか、どうにかしてかばおうとしてしまうのか。やがて子どもが中年、私が老人になる未来は、もやがかかってうまく想像がつきません。
VERYライター・藤井そのこ
本企画担当ライター。父から俵万智の歌集を贈られたことを機に短歌にハマる。日々Instagramストーリーズで短歌を投稿。息子は2歳。
VERY編集・髙田翔子
大学時代は短歌会に所属し、短歌に没頭していた。今回の企画で、20年以上ぶりに短歌を詠んだそう。長男は小学4年生。
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撮影/馬場わかな(取材、人物) 取材・文/藤井そのこ 編集/城田繭子
*VERY2025年4月号「VERY誌上子育て歌会」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。