仕事、ママ友、家族。義理、義務が発生する中でも、誘いやお願いを断りたいと思うこともありますよね。でも断れば角が立つし、評価が下がるかも…。そもそもこれ、なんで自分がやらないといけないの？そんな恐れや怒りやモヤモヤを持つママたちのために、“ポジティブに断れる”マインドの作り方を聞きました。
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「無理！」の上手な
伝えかたがママを救う！
❝夫から「これやっといて」と言われた家事。今日は気乗りしない❞
諸富 普段担っている家事だとしても、月に1週間くらいは何もやる気が出ないときがあるのは普通でしょう。「あなたがやってくれたらいいじゃない」と言いたくなると思いますが、「わたしメッセージ」で、「私今、体がだるいんだよね」「やる気が出ないんだよね。あなたはいいシーズン？」と伝えて。
海老原 「母親だから」「女だから」やるべきだと思うなら、本当にそうか考えてみましょう。何でも1人でやるのは簡単ではありません。無理してやって、夫に対する怒りを溜め込むぐらいなら、やらないという選択肢の方が家庭内平和につながるかも。からだの声を聞くことに罪悪感を覚えないで。
❝荷が重すぎる仕事を頼まれた。でも時間的余裕もない！❞
諸富 この仕事を入れてしまうと徹夜になっちゃって難しそうです、すみません、などと苦しい状況を説明して謝りを入れた後、「○○さんにはわかっていただけたらうれしいです」と、アドラー心理学の励ましの言葉を付け足します。必ず断りたい場合、相手が「人の都合がわかってくれる人」だという前提で話すと断れますし、嫌な後味も減らせると思います。
❝子どもが「あれ買って！」と駄々をこねて泣き、いつも買ってしまう❞
諸富 「わたしメッセージ」で伝えましょう。「この間も買ってあげたよね、なんで泣くの」という子どもが主語の「あなたメッセージ」だと、自分はママに嫌われているんだと思ってしまいます。「ママは、わがままな子になってほしくないんだ。わかってくれるとうれしいな」とアドラー心理学の“勇気づけ”も付け加えて。それでもダメなら、決して怒らず「買わないよ♪行くよ行くよ～♪」と歌いながら逃げてもいいです。他の駄々にも応用できますよ。
海老原 スーパーで寝転がって泣かれたりすると辛くなりますよね。つい怒りたくなる気持ち、わかります。そんなときは自分のインナーチャイルドを登場させて、「この状況、つらいよね」と心の中で話しかけましょう。自分の子どもと「小さい自分」のふたりを同時にケアするイメージです。小さい自分に共感しながらだと、泣きわめく子どもにも落ち着いて対応できるはず。
❝苦手な人から気乗りしないランチに誘われた…！❞
諸富 日程で断ると「だったらいつが空いてる?」といつまでも誘われてしまいそうな場合、「わたしメッセージ」で断りましょう。「『孤独のグルメ』を見て、ひとりでごはんを食べるのにハマってて。ひとり時間が今欲しい時期なんだ」「○○に時間を取られててなかなか行けないんだ」とマイブームや自分の生き様を押し出すと、変わってると思われるかもしれませんが角を立てずに断れるでしょう。
❝夫から久々に夜の営みに誘われた。でも今はそんな気になれず…。❞
海老原 二人の関係性によるのでこのセリフでOKというのはありませんが、そもそも「したくない」ということは夫との関係に問題があるのかも。そこを無視しないことがまず大切。妻だから受け入れるべき、というべき論を手放して、「今は（したくないという）自分の気持ちを大切にしたい」と伝えてみましょう。相手の気持ちも尊重しつつ言えたらいいですね。
「わたしメッセージ」と
「勇気づけ」で相手に否定感を与えない
断るときに大切なのは、「あなた」ではなく「わたしメッセージ」にすることです。特に相手が親しい人の場合、あなたメッセージにしてしまいがちで「なんであなたはいつも私に押し付けるの、なんでやってくれないの」と相手を責めたり否定するニュアンスばかりが伝わってしまいます。そんなときは主語を私にした「わたしメッセージ」に。「引き受けるとかなり睡眠時間が減ってしまいそうだから難しい」「今暴飲暴食が気になってて、今回はやめておくね」などです。そしてさらにアドラー心理学でいうところの「勇気づけ」を使ってみて。「わかっていただけるとうれしいです」など。これは大人だけでなく子どもにも有効です。例えば子どもが駄々をこねるとき「（あなたは）昨日もずっと動画見てたからだめ！」ではなく「○○くんがずっと動画見てると目が悪くなっちゃいそうで心配（わたしメッセージ）。15分だけって約束できるよね（勇気づけ）」など。ぜひ実践してみてください。
諸富祥彦先生
筑波大学大学院博士課程修了、英国イーストアングリア大学などを経て明治大学文学部教授。教育学博士。臨床心理士、上級教育カウンセラー。著作やテレビ出演も多数。
「感じよくしなきゃ！」という
思い込みから自由になりましょう
女性はケアする役割を期待されがちで、要求には感じよく応えるのが「たしなみ」と思い込んでいることも。笑顔でYESと言えない自分を責めたり、断ればわがままと思われると心配したりしていませんか。小さい頃から「みんななかよく」と言われ続けたのは、実は親や先生のコストを下げるため。それで犠牲になるのは、「私はどうしたいんだろう？」と自ら考える習慣です。それをぜひ、取り戻してほしい。あなたが断っても、相手が機嫌を損ねるとは限りません。「断っちゃいけないけど断るんだ！」と力みながら言葉を押し出すと、攻撃的な言い方になってしまうこともあります。まずは、必要以上に頑張らなくてもいいという大前提をお伝えしたいですね。自分を大切にし、自分との関係性がしっかりしていれば、「断った相手に嫌われないかな？」と不安に感じることが少なくなりますよ。自分の声をまず聞いてほしいし、「NOと言うことは自分を守るスキル」と考えてみて。
海老原由佳先生
マインドフル・セルフ・コンパッション（MSC）講師。東京大学大学院修士（社会心理学）。J-WAVEナビゲーター、テレビ朝日キャスター、NHK番組ナレーションなどで活躍したのちに現職。
取材・文／有馬美穂 編集／井上智明
＊VERY2025年3月号「無理！の上手な伝えかたがママを救う」より。
＊掲載中の情報は誌面掲載時のもので、変更になっている場合もございます。
