お互い30代で、“既婚・DINKs(仮)”を自称するつっきーこと月岡ツキさんと“既婚・子育て中”のよしのさん。会社の同僚でもある二人が、さまざまな「女の選択」をテーマに配信を行っているポッドキャスト『となりの芝生はソーブルー』がVERY世代で話題です。なぜ今、ポッドキャストが人気? 番組をはじめたきっかけは? お二人に聞きました。
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会社の同僚二人で始めた配信
──好きな時間に、さまざまなジャンルのコンテンツを聴くことができるとあって、人気のポッドキャスト。普段は会社員としても働く二人が、配信を始めようと思ったきっかけはありますか?
月岡ツキさん(以下、月岡) 私はもともとポッドキャストのいちリスナーだったのですが、いろいろな番組を聴くうちに「自分でも配信してみたいな」とも思うようになって。でも、芸人さんみたいな話芸もないし、一人語りはハードルが高い。一緒に語ってくれる人がいたら……と探していたところ、勤務先にもともと同僚だったよしのちゃんが転職してくると聞いてスカウトしました。
よしのさん(以下、よしの) 私も芸人さんのラジオ番組が好きでポッドキャストで聴きまくっていたので、つっきー(月岡さん)に誘われて、特に抵抗感なく「じゃ あやってみるか」と。
月岡 よしのちゃんが話せるタイプであることはわかっていたし、彼女が育児休暇をとっていた時期に、友達限定のSNS上に「つわりがつらい! 夫との間で家庭内不平等!」と頻繁に日々の悩みをぼやいていたのも知っていたので、「この人だったら語りたいことがいっぱいありそうだから、誘ったらいけるかも」と思ったんです。webでポッドキャストのやり方を書いているサイトはたくさんあるし、スマホやPC、音声マイクさえあれば大がかりな機材がなくても始められるので参入の壁は低めかも。
「寝かしつけしながら聴いています」というリスナーも
──2023年8月からスタートしたお二人の番組のリスナーさんは、どんな方が多いのでしょう?
月岡 私たちのように働く女性や育児中の方が多いです。音声だけの媒体なので、家事や育児をしながら聴きやすいようで、「子どもの寝かしつけをしながら、片耳で聴いています」なんてお便りをいただくこともあります。
よしの 子育て中は、話し相手がいないとか、悩みをわかってもらえないなど孤立を感じることもあると思います。私たちの番組はざっくばらんに話をするスタイルなので、友だちとの会話を隣で聴いているような感覚になるのかも。「女友だちと飲みにきているような気分」なんて声もいただきます。
月岡 たしかにプロの方のラジオ番組と違って、話のオチや尺もそれほど意識しないでただただ意見を交わしているだけなので、「飲み屋で話を聞いている感」が強いのかもしれませんね。
よしの いちおう、テーマやざっくりとした構成だけは毎回、事前に二人で決めています。それから「自分のスタンスが定まっていないテーマは取り上げない」とか「話したくないことは話さなくていい」というルールも。私たちには会社員としての仕事や家事、育児もあるので、時間のないときには無理せずに配信を休むようにしていて。その時々の状況に合わせてサステナブルにやることが配信を続けられる理由かもしれません。
月岡 最近は声の大きさや間合いもコツを得てきたので、収録も編集作業も短時間でいけるようになりましたが、最初の頃はもう本当に大変で。ヒートアップすると声が大きくなりすぎて音割れがひどいし、よしのちゃんの声が高すぎてマイクで拾えないし(笑) 。
よしの お互い自宅からリモートで収録しているのですが、私が病み上がりで永遠に咳をしている回や、二人がずっとケンカしている様子を配信した回もあったよね。地方移住をしてみたいと言った私と、地方出身で「地方で暮らすことはそんなに甘くない」と言うつっきーが、人に聞かれる内容だというのに本気でぶつかりあってしまって、どう受け取られるかな……と思ったのですが、リスナーさんからは意外にも好意的に受け止めてもらいました。
月岡 私自身、地方出身なので地元のリアルもわかるし、移住したいという気持ちもよくわかる。そのせいでつい熱くなってしまって(笑)。「成人女性がずっとケンカしているのを聞くのは初めてでした」なんてお便りがたくさん届いたほど。ポッドキャスト配信第一回から最新回まで、現在もすべて聴くことができますが、これから聴いてみようという人は、試行錯誤を経てだいぶ進化した最近の回をおすすめします!
おすすめポッドキャスト番組はほかにも
──お二人は、ほかに好きなポッドキャスト番組はありますか?
月岡 たくさんあるので選びきれないですが……。たとえば、テレビ朝日アナウンサーの本間智恵さんのほかに報道記者のお二人で配信する『ホンマのホンネ ~わたしたちのモヤモヤニュース会議~』という番組が好きです。わかりやすい切り口で政治やお金の問題、時には家事の流儀などの話題も上がって興味深いんです。社会学者の富永京子さんの『仕事の合間』という番組も好きでよく聴いています。最近の研究に関する話だけじゃなく、お買い物が大好きな富永先生が買ったジュエリーの話なども話題に上がる間口の広さが素敵です。
よしの 30代育児中の編集者・小沢あやさんがさまざまな業界で働く女性をゲストに招いておしゃべりする『働く女と○○と。』が毎回楽しみです。4月にはコラボ公開収録イベントも予定してます。ほかにも、NewsPicks for WEのスタッフの方々が配信している『WOMANSHIP -はたらく私たちのお悩みサミット-』は、社会問題やジェンダー問題がテーマに上がることも多いので、VERY読者の皆さんにも親和性が高そう。kemioくんや大久保佳代子さんの番組も大好きです。
配信をしていたら悩みへの解像度が上がった!
──仕事や育児に多忙な日々の中、わざわざ時間を捻出してポッドキャストでの配信を続ける魅力はどんなところにあるのですか?
月岡 ポッドキャストは、「自分とは違う立場の人と話して、世界を広げたい」との思いで始めました。私は既婚者ですが、昨年出版した著書『産む気もないのに生理かよ!』にも書いた通り、現時点で子どもを持つという決断ができません。 “DINKs(仮)”を自称していて、立場の似た人と集まっていると、そこで話が完結しちゃいがちです。でも、絶賛子育て中のよしのちゃんと話すことで、視野が広がるのを実感します。子どもがいる人が抱える悩みへの解像度が上がった気がするのはよい変化だと思っています。
よしの 私自身、自分から積極的に発信をするタイプではなかったので、育児中は体の中にどんどん不満や愚痴という名の毒がたまっていくようでした。番組を通してつっきーに話を聞いてもらうことで、デトックス効果を感じています。
月岡 それは私もあるかも。二人ともフルリモートで働いているので、誰かと雑談をする機会が少ないんですよね。ポッドキャストの配信は「同僚と職場で雑談をして、ストレスを吹き飛ばす」のと同じような効果がある気がします。
よしの リスナーさんからの反応も素直に嬉しいよね。私は家事と育児を夫と完全に折半しているけれど、最初から分担がうまくいっていたわけではなくて、夫とトライアンドエラーを繰り返しながら、今のやり方におちつきました。そのことを配信で話したら「参考にしたい」「夫に言えずにモヤっていたことを私も伝えてみます」なんて反応をもらって。こればかりはそれぞれの家庭の事情で正解はないのだろうけれど、「今のままじゃ嫌だ」と思っている誰かの背中を少しだけ押せた気がしてうれしかったです。
月岡 リビングでさりげなく私たちの番組を流して、夫に聞かせたっていうリスナーさんもいました。面と向かっては話しづらいテーマでも、「あの人たちがこう言ってた」といえば切り出しやすいのかも。世の中のことや夫婦関係についてモヤモヤを抱えているけれど、それについて誰かとしゃべれるわけでもない人ってけっこういるような気がします。「夫婦間の不平等を話し合うきっかけになりました」なんて声を聴くと、自分たちで勝手にはじめた番組だけど、やっていてよかったなと思えます。
PROFILE
月岡ツキさん(写真・右)
1993年生まれ、長野県出身。現在は長野県で夫と二人暮らし。都内のIT関連会社で週に3日、正社員として働きつつ、ライターやコラムニストとしても活躍。2024年12月には初の著書『産む気もないのに生理かよ!』を出版。
よしのさん(写真・左)
1993年生まれ、埼玉県出身。都内のIT関連会社でデザイナーとして週5日、時短勤務中。会社員の夫と2歳の長男との3人暮らし。月岡ツキさんと二人でポッドキャスト番組『となりの芝生はソーブルー』をほぼ毎週水曜に配信中。ポッドキャストは、ApplePodcastやSpotifyなど
単行本『産む気もないのに生理かよ!』(飛鳥新社)
「母になりたい」とは思えない。でも、「母にならない」とファイナルアンサーもできない……。令和に「母」をやる難しさ、「母は強し」の呪い、「子どもを産まない選択」への不安・ゆらぎ・憤り。ポッドキャスト『となりの芝生はソーブルー』で人気のコラムニスト・月岡ツキさんがさまざまな側面から「産む産まない問題」を綴る、子どもが今いる人もいない人も共感必至のエッセイ。作中には“VERYと「ゴリラ」の時間割り”として本誌も登場!
取材・文/小嶋美樹 撮影/古本麻由未