日本に暮らしている限り、いつかその日は起きると言われています。もしそれが、ワンオペで子どもと一緒の時だったら?果たして、とっさにどんな行動ができるでしょうか。今回は、防災士ママや経験者に対策を伺いました。
こちらの記事も読まれています
地震の【前・その時・後】にできること
BEFORE
外出先について調べる&
ママバッグ+笛をぜひ準備して!
☑︎災害マップや避難路を頭に入れる
☑︎1人ひとつで笛がおすすめ!
☑︎ダンゴムシポーズを練習
・「出先について調べることが一番の準備に。山や海なら、ハザードマップをチェックすること。ママバッグは最強の防災バッグですが、太陽光発電可なモバイルバッテリーや小銭も加えて」(渡邊)
・「下敷きになった時助けを呼んだり、避難先での防犯になる笛を。また日頃頭を守るダンゴムシポーズの練習を親子で!」(しほママ)
AT THE MOMENT
動けないので “ダンゴムシ” ポーズで
まずは頭を守る!
☑︎子どもを中に入れて“ダンゴムシ”
☑︎カゴやカバンをかぶっても
☑︎とにかく頭を守って姿勢を低く
・「緊急地震速報が鳴って揺れるまで時間があるなら、看板の下やガラスの近く、崩落しそうな建物から離れ道路の真ん中などに逃げたいですが、急に来ることも。揺れている間はとにかく頭を守って」(渡邊)
・「東日本大震災も熊本地震も、揺れている間はまったく動けず。姿勢を低くして手で頭を守る“ダンゴムシ”ポーズを取り急所を守って」(しほママ)
AFTER
まずは自分が落ち着くこと!
胸に手を当てて「大丈夫」
☑︎深呼吸してまず自分を落ち着かせる
☑︎胸に手を当てて「大丈夫」と呟く
☑︎子どもに「大丈夫だよ」と伝える
・「パニックコントロールの方法として、『大丈夫』と声に出し、低くゆっくり落ち着いた声でしゃべるようにします。子どもはお母さんの様子を見ているので、まずは自分が冷静になれるように」(渡邊)
・「焦っていると、まわりの焦りに流されて自分の判断ができなくなることが。まずは深呼吸して自分が落ち着くことを最優先に」(しほママ)
出先別【地震後3分以内にやるべきことリスト】
クルマ
・「①ハザードランプをつける、②ゆっくり左に寄せて止まる、これだけをとりあえず覚えて。急に止まると危ないです。危なくない場所ならラジオを付けて。また家族が一緒の場合はすぐに他の人に連絡を取り合ったりしないように。不必要に回線を塞がないようにしましょう」(しほママ)
・「避難に車が足かせになることも。車を置いて避難するときは、なるべく路肩に寄せて鍵はつけたままに。これは緊急車両などの邪魔になる場合、動かせるようにしておくためのマナー」(渡邊)
電車やバス
・「乗務員さんなどはかなり訓練もしていざという時のシミュレーションも行っています。まずは落ち着いて冷静に指示に従うこと。ベビーカーを捨てて逃げる可能性があるので抱っこ紐もマスト」(渡邊)
・「地震で急停車することがあるので、日頃からケガを防ぐため吊り革にはつかまるようにして。乗務員の誘導に従うのが一番ですが、群衆雪崩が怖いです。子どもは抱っこし、壁際に手をついて人の流れをやり過ごしたほうがいいかも」(しほママ)
歩いてる
・「車が走っていなければ大きな道路の真ん中に。新しい建物なら比較的安全ですが、全面ガラスなどは割れて大怪我をする場合も。1階が駐車場の古いビルや家は倒れる可能性もあるので近づかないように」(渡邊)
・「上や横からモノが落ちたり飛んでこないか、ガラスがないかはできればチェックして安全ゾーンで“ダンゴムシ”に。でも必ず安全と言い切れる完璧な場所はないので、自分で判断するしかない。なのでまずは落ち着くこと!」(しほママ)
海
・「避難経路や津波避難タワーなどの場所をあらかじめチェックするのはマスト。いざ揺れたらその経路もしくは高いところに逃げるのが基本」(渡邊)
・「令和2年6月から『津波フラッグ』が避難の合図として活用されています。赤と白の格子模様のデザインで、いざという時ライフガードなどがフラッグを揺らして合図します。海に入っている時は揺れを感じられないかもしれないので、フラッグのことをまずは知っておいて」(しほママ)
山
・「事前準備としてハザードマップを見て、過去どんな災害が起きていたかはチェック」(渡邊)
・「揺れが起きたら山でも“ダンゴムシ”が基本。斜面だった場合は大きな木につかまって転落を防いで。浮き石が転がってこないかチェック。土砂崩れは谷筋に沿って流れていくため、谷筋に対して直角の方向に避難しましょう。また上流にダムがある場合は決壊の恐れも。その後の余震も踏まえてすぐに下山しましょう」(しほママ)
デパート・スーパー
陳列棚からは離れる
・「大きい施設なら備蓄や授乳室等があることが多いので、無理をせずそこにとどまるのも手です」(渡邊)
・「今のエレベーターは自動的に最寄りの階で止まるようになっていますが、すぐに全部の階のボタンを押し、最初に止まった階で降りましょう。基本は安全ゾーンで“ダンゴムシ”。特にガラスが使われた什器や割れ物が陳列された棚のそばは危険!棚から離れましょう。階段の踊り場や柱近くが比較的安全です」(しほママ)
ママたちのリアルな地震対策“こうしました”
14年前の“その時”
子連れのママはどう行動した?
❝レストランの厚意で長時間待機❞
抱っこ紐の1歳児連れで長距離も歩けず途方に暮れ、近くのレストランに駆け込み。“いていいよ”と言っていただき、深夜すぎに家族の迎えが到着するまで滞在しました。(M・Hさん)
❝結局5時間電車の中にいました❞
0歳と地下鉄に乗車中でした。ベビーカーで出て行くのも怖く、水やお菓子や離乳食、おむつもある程度持っていたので車内で過ごし、そこから意を決して8キロ徒歩で帰宅。(I・Jさん)
❝友人宅に頼って1泊しました❞
出先の1キロ先くらいに友人が住んでいることを思い出して3歳を連れて思い切って連絡。泊まっていいよということで甘えました。そこからより仲良しになれました!(M・Aさん)
教えてくれたのは
渡邊里衛さん
VERYライター、防災士、元CA。防災企画を担当したことをきっかけに防災士に。3児の母。
“胸に手を当てて「大丈夫」とまずは自分が落ち着く”
「その時」にまず必要なのは落ち着くことです。CAの研修でも、緊急時、胸に手を当てて「大丈夫」と呟くのがマニュアル化されました。子どもにも「ママが一緒にいるからね、大丈夫」と落ち着いた声でまず安心させてあげましょう。体に染み込ませていないとできないので、パニックになりそうな時の「大丈夫」、練習しましょう!
しほママさん
『歌う防災士』が愛称。東日本大震災での被災をきっかけに防災士に。熊本地震も経験。2児の母。
“完璧でなくていいできることからやってみて”
シングルマザーなので、備えるゆとりはなく、東日本大震災の時はどうしていいかわからず不安でした。熊本地震の時は、揺れを怖がっていた息子の首に笛をかけて寝かせ、安心させることができました。できるしこ(熊本弁)でいいんです。やっておけばよかったという後悔だけはしないように、できる範囲で準備しましょう!
イラスト/Ryosuke.Nagatomo 取材・文/有馬美穂 編集/井上智明
*VERY2025年2月号「もしも子どもと一緒の時に地震にあったら」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。