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【ひとりっ子の見分け方】中学受験塾代表は子どものどこを見ている?

ひとりっ子にどんなイメージがありますか? マイペース、競争心がない、自分の世界を持っている……色々だと思いますが、数千人の親子を見てきた進学塾VAMOS代表・富永雄輔さんは「実はひとりっ子の特徴はなく、ひとりっ子親の特徴の方が目立ちます」と指摘します。ひとりっ子親が気をつけるべきポイントとひとりっ子育児のコツをお聞きしました。

——ひとりっ子は一般的なイメージとしてマイペースとか競争心がないと言われることが多いと思うのですが、富永先生が感じるひとりっ子の強みと弱みを教えていただけますか?

富永さん(以下、敬称略):初っ端からこんなこと言ってしまってなんですが、「ひとりっ子はこうだ」という特徴はないと思います。あるとしたら、ひとりっ子の親の特徴ですね。ひとりっ子の保護者の方と話すと僕は5分でわかります。子どもについて話す時の情報量の多さや話し方が、きょうだいがいる家庭とは違うんです。

——子どもではなくて親が違うと。

富永:ポジティブに言うなら、我が子をよく見ているし、よく知っている。ネガティブな表現をするなら、自分の主観が子どもに入り過ぎている。塾で面談をしていて「うちの子は偏差値50なんですけど、先生どうしましょう」と言うのがきょうだい親だとしたら、ひとりっ子親は「偏差値50で一生懸命勉強しているのに成績が伸びなくて。でも、今は50だけど、この子はやればできると思うんです」というように情報が多くなってきます。きょうだい親ははじめから我が子のことがわからないという前提の人が多いので、情報量が少ないしこちら側が聞き出さないと出てこないですが、ひとりっ子の場合は情報がたくさん出てくるので話しやすいと言えば話しやすいですね。

——その情報が必ずしも正しいとは限らないという感じですか?

富永:正しい情報もあれば、ちょっと過小評価、もしくは過大評価をしていませんか?という場合もあって玉石混交です。そこさえ気をつければ、ひとりっ子はすごくいい子育てができると思います。

——そうなるのは、きょうだいという比較対象がいないからでしょうか。

富永:きょうだいがいない分、比べる対象が親である自分になってしまっているんですね。あと、きょうだいがいると諦めがつくこともあるけど、ひとりっ子はなかなかそうはいかない。たとえば、我が子がお受験に向いてないかもしれないと思っても、やめるきっかけがなくて突っ走ってしまったり。きょうだいがいれば、この子の成長は上の子に比べてちょっと早いなとか遅いからやめておこうかなと思えても、比較対象がないゆえに過度に突き進んでしまうケースはあるかもしれません。だから、ひとりっ子の親ほど客観的なデータを大事にした方がいいですね。

——塾や習い事の先生の意見ということでしょうか。

富永:そうですね。保育園でもいいですし、できるだけ早い段階で親以外の他者の目を入れることが大事だと思います。保護者が特別すごくないと思っていたことが実はすごい場合ってたくさんあるんです。親が気づかない能力に他者なら気づけたりする。要は、親の考え方が100%正しいと思って子どもに接することほど危険なことはないということです。親が光を照らしている側面だけじゃなく、常に違う角度から誰かに見てもらう、下から照らしたらこんな側面もあったんだと気づくことが大切です。ただ、他者から聞いた我が子の情報を鵜呑みにする必要もなくて最終的に判断するのは親な ので、情報をできるだけ多く持っておいて判断材料にしてほしいということですね。ひとりっ子の親ほど、自分をリセットすることが必要だと思います。

——ひとりっ子は親が子どもを同一視しがちだから、そこを疑ってかからないといけないということですね。

富永:そうですね。あと、なるべくママ友の話は聞かないこと。家庭環境が違う人の子育ては全く別物なんですよ。たとえば、三人きょうだいにとってのSAPIXと、ひとりっ子のSAPIXは意味が違います。親が勉強を見たり手をかけられる人と、うちは全く面倒が見られません、サピに通わせているだけですという人は、同じSAPIXでも全く環境が違ってくるので、全ての背景を理解しないで断片的に切り取るととんでもない誤解を生むことはあります。

——お話を聞いていると、まずひとりっ子親の特徴があって、それがひとりっ子を作り出しているという感じですね。

富永:あとは、きょうだい構成の影響もありますね。一般的にひとりっ子の女の子は大事にされている箱入り娘のように思われがちですが、兄が二人いる末っ子の女の子もめちゃくちゃ大事にされているので箱入り娘感があります。ひとりっ子の特徴を強いて言うなら、高学年になってメンタルがちょっと弱そうかなと感じる男の子がひとりっ子の確率が高いというのはあります。ただそれも、歳の離れた姉がいる弟もそうだったりしますし。ただ、ポジティブなことを言うと、やっぱりひとりっ子は成績がいいですよ。男子御三家に行くような子はだいたいひとりっ子か、兄弟がいても長男の比率が高いような気がします。親が子ども一人にリソースを注げる、もしくは第一子ということで塾も習い事もその子を中心に考えられるというメリットが関係しているんだと思います。要は、ネガティブな要素があったとしても、親がどう関わってどう伸ばすかが重要ですね。

お話を伺ったのはこの人

富永雄輔さん

進学塾VAMOS代表。幼少期の10年間をスペインのマドリッドで過ごす。京都大学経済学部を卒業後、東京・吉祥寺に幼稚園生から高校生まで通塾する少人数制の塾、「進学塾VAMOS(バモス)」を設立。入塾テストがないにもかかわらず、中学受験の第一志望合格率は7割を超える。現在吉祥寺、四谷、浜田山、お茶の水に校舎を構える。学習指導のみならず様々な教育相談にも対応し、年間400人を超える保護者の受験コンサルティングを行っている。また、各学校にも精通しており、中学校の紹介等をYouTubeで行っている。自身の海外経験を活かして、トップアスリートの語学指導、日本サッカー協会登録仲介人として若手選手の育成も手掛けている。近著『ひとりっ子の学力の伸ばし方』(ダイヤモンド社)

取材・文/宇野安紀子

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