Photo by／花盛友里
今週末は参議院議員選挙。シェアしたいメッセージは、「ママこそ投票に行こう！」。本誌連載『VERYママ書店』の店主も務める作家・柚木麻子さんに、VERYインスタグラムの投稿のためにショートエッセイを寄稿していただきました。次の世代のために届けられる一票を諦めずに大事にしたい気持ちを込めて、抜粋し掲載させていただきます。
『最近ずっとリフレインしている光景がある。高校時代の通学路で、クラスで一番勉強ができるAちゃんが、大真面目な顔でふいに話しかけてきた。「私たちが大人になる頃、今のような暮らしはできない。世の中はどんどん悪くなる」その時は、なんて不吉な予言だろうとびっくりして、悲しくなり「えー、やめてよぉ〜」と彼女の肩を揺さぶったりしていたものだが、今ならわかる。のちに国際的な支援活動に従事することになる彼女は、とても正しい視点をもっていたのだ。日々の暮らしに追われていると、一日をなんとか乗り切ることに精一杯で、極力ポジティブに現実をとらえ、面白いことを考えていないとやっていられないし、そういう考え方の方が人に受け入れられやすいとわかっている。でも、選挙の日くらいは、大真面目に後ろ向きに、そして自分ではない他の誰かのことを真剣に考えてもいいのではないか。毎日毎日Aちゃんのようには生きられない私だが、この日だけは彼女になろう。悪い未来と正面から向き合い、それを回避するために今自分になにができるか。キツいかもしれないが、その行動こそが、次の世代のAちゃんを育み、私のようになにも考えていなかった人間をも刺激し、それは小石が投げ込まれた水面の輪のように広がっていくに違いないのだから。』
寄稿／柚木麻子
