神山まりあさんの本誌人気連載「笑うママには福来る。」からもう一度読みたいエピソードを紹介します。息子のディーン君はちょっと怖がり。「できない」が口ぐせだったディーン君の成長を感じた瞬間とは？

＊VERY2021年9月号・連載「神山まりあの笑うママには福来る。」を再編集したものです。

【連載】神山まりあの「笑うママには福来る。」
Vol.31「できなくない」

ディーンは少し怖がり。
本当は挑戦したいのに、失敗したらどうしようという恐怖から「僕にはできない」と言って挑戦する前にあきらめることがある。

できなくてもいいんだよ、トライが大事！ と励ましてもなかなか最後の一歩を踏み出すことができない。
だから今は「できない」と言ったときに、じゃあトライするときになったら応援するね。と言って少し様子を見ることにしたの。

日々の中で何度か耳にする我が子の「できない」発言。
ゆっくり、ゆっくり時間をかけて挑戦したいって思える心の強さが育てばいいなあなんて考えてた。

週末、アマゾンから届いた宅配の巨大段ボールに興奮したディーンはこの段ボールでお店やさんごっこをしたいと言い出した。
それはいい考えね、ということでクレヨンやペンでお菓子を描いたり、ジュースを描いたり、お店のようなアマゾンボックスの出来上がり。
二人で大盛り上がりしてお店やさんごっこをしていると、ディーンがケーキをもっと描こうと提案。
それはいいね、でもマミーはもうたくさん描いたからディーンが今度ケーキを描いてごらん？ と聞いてみた。

はい、またでたーと思いながら、じゃあできるようになったら教えてね。と答えた。

横を見るとディーンが何かを思い悩んでいるようにクレヨンと段ボールを見つめてる。
そっとしておくと、ディーンが啜り泣きをしながら段ボールに絵を描き始めた。

小さな小さな
絵だ。

そのケーキの絵を何回もぐちゃぐちゃ描きなおし鼻水垂らして泣いている。

あえて何も言わず、描き終わるのを待ってた私。

クレヨンを箱に戻し、座って段ボールを見つめてるディーン。
覗いてみると、イチゴのようなものがのった小さな四角いケーキらしいものが描いてあった。

思わずディーンをぎゅーっと抱きしめて、
「こんなにおいしそうなケーキ初めて見た！」と伝えた。

すると、今まで
我慢してたものが
溢れたように
私にしがみついて
大声で泣き始めた。

ウワアアアアアアと大泣きする息子をぎゅっとして、よく頑張ったねって頭を撫でてあげる私も涙目。

たかがこんな小さなケーキの絵だけど、彼にとってはとっても大きな勇気がいることで。
自分の中の殻を破る瞬間はきっと怖かったんだろうなって。

ディーンにとっての「できない」ことは今日「できなくない」に変わって、自信に変わったね。

その日に描いた小さなケーキは、ずっと部屋に飾ってある。
家に来た人みんなにケーキの絵を見せてあげるディーンはもう、

「できなくない」。

◉神山まりあ

1987年2月17日生まれ。2011年ミス・ユニバース ジャパングランプリ。2016年ディーンくんを出産。2018年妊娠、出産、初めての育児を綴った著書『神山まりあのガハハ育児語録』（光文社）を刊行。インスタグラム@mariakamiyama。

イラスト／Apricots Art　編集／湯本紘子
＊VERY2021年9月号「神山まりあの笑うママには福来る。」より。
＊掲載中の情報は誌面掲載時のもので変更になっている場合があります。