神山まりあさんの本誌人気連載「笑うママには福来る。」からもう一度読みたいエピソードを紹介します。息子のディーン君からとんでもない秘密を打ち明けられたまりあさん。そこでひと言、「実はママもね……」驚きの話を聞いた息子さんの行動とは？

＊VERY2021年8月号・連載「神山まりあの笑うママには福来る。」を再編集したものです。

【連載】神山まりあの「笑うママには福来る。」Vol.30
「僕は真夜中のスーパーヒーロー」

パパがお仕事で不在の夜。
寝る前にディーンと二人でベッドでお話ししていた。

最近の面白かった出来事、悲しかったこと、嫌だったこと、二人で落ち着いて話すといつもは言わない本音もすべて話してくれる。

30分くらい二人で話していたら突然ディーンが真剣な顔をして言った。
「マミー、今から内緒のお話するからね。絶対内緒だからね」
なになに、と私。
「僕ね……本当はスーパーヒーローなの。本当は言っちゃいけないんだけど、パパとマミーには言うね。でも誰にも言っちゃダメだよ」

そうきたか。

いつもみたいにふざけて言ってくれればリアクションできるのだが、こんなにも真剣に見つめられて話されるとなんと返事したらいいかわからない。

「……そうだったのね。マミー知らなかった」
必死で笑いをこらえ返事する。
「でもディーンくん、いつ変身しているの？」

ますます真剣な顔をするディーンの鼻の穴は開ききっている。
「あのね、マミーとパパがねんねした後、そーっとコスチュームに着替えてドアからでてるの」
いつも腹を出していびきかいている息子が脳裏をよぎる。

「……モンスター怖くない？　ブホッ」

ちょっとだけ笑ってしまったが、咳き込むふりをした。

「こわくないよ、ひっちゃちゅわざあるから」

必殺技のことだろう。

噓とわかりつつも、この想像力を壊したくない。
そこで一つ乗っかることにした。

「実はね、マミーも
スーパーヒーローなの」

まさか……目をまん丸にして驚くディーン。
「たまにだけどね、こんな感じで敵をやっつけてる」
急いでGoogle先生で画像検索する。
〈神山まりあ　ミスユニバース　ナショナルコスチューム〉
10年前に世界大会で着たのは女侍のコスチューム、刀を振り回すパフォーマンスをしたのを覚えている。

侍マミーの写真を見せると、ディーンは固まって言った。
「……マミー、つよいの？」

「強いよ、すごく。ヒーロー界では〈刀の女王・ヴィンチェンツォ・カタナ〉って呼ばれてる」
韓国ドラマに影響され、ペラペラと出てくる。

「一緒に戦う？」私はディーンを誘ってみた。

「マミーごめんね、ディーンくんは内緒のヒーローだから夜に一人で戦うの。本当ごめんね」

ディーンの変身姿は絶対に見ることができないらしい。

「わかった。じゃあお互い地球の平和のために頑張ろうね」
そう言ってハイタッチをしてディーンは眠りについた。

そこから、ウッソだよーんなんて言う暇もなく、日々が過ぎていく。
私の罪悪感は募るばかり。

寝る前に応援のガッツポーズを送り合う息子と私は、まだ二人の中で真夜中のスーパーヒーローなのだ。

◉神山まりあ

1987年2月17日生まれ。2011年ミス・ユニバース ジャパングランプリ。2016年ディーンくんを出産。2018年妊娠、出産、初めての育児を綴った著書『神山まりあのガハハ育児語録』（光文社）を刊行。インスタグラム@mariakamiyama。

イラスト／Apricots Art　編集／湯本紘子
＊VERY2021年8月号「神山まりあの笑うママには福来る。」より。
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