子育てをしているとつい、自分の子を周りと比べて焦ったり、自己嫌悪に陥ったり…。そんな、比較して疲れちゃうママたちの悩みに、〝子どもの視点〟を何より大事にしている柴田愛子さんから、もっとラクな気持ちで子どもに向き合うための、愛ある処方箋をいただきました。
ママの悩み ①
仕事が忙しく基本的に毎日夕方お迎え。
習い事をするなら
土日に限られてしまうが、
下の子もまだ小さくそこまで
手が回らないというのが本音。
たくさん習い事をしているよその子を見ると、
私のせいで他と差がついてしまっている気がして
自己嫌悪に陥ります。
(5歳&1歳男の子のママ)
柴田さんからの処方箋
子どものやる気は持続しません(笑)
習い事は、空振り覚悟でやるくらいが
ちょうどいいの
幼児までのお稽古は基本的に親の自己満足だと思いましょう。前提として、子どもがやりたいと思っていればやったらいい。ただし、子どものやる気は持続しないの。最初は「絶対やりたいー!」って始めたスイミングも、自分はちゃんと順番を待っていたのに後ろの子に突然抜かされたとか、ちょっとしたことがきっかけで嫌になっちゃうこともある。そこで、親が言いがちな「あなたがやりたいって言ったんでしょ!」は違うと思うの。「夏休みも毎週行かなきゃいけないのか…」、「途中でやめたいって言ったら怒られるかな?」と、始める前に考えられるのは小学校4年生くらいからで、幼児にはこれから先のことを予測して判断するほどの力がまだありません。だから始める時は100%の気持ちで「やりたい!」なんだけど途中で嫌になっちゃったりするのよね。習い事の〝やめる・やめない〟はどの家庭でも起こりがちだけど、いやいややって、その子に身につくことはまず、ない。
ものすごく印象的なエピソードがあるんだけど、走るのが大好きでとっても足の速い男の子がいて、お父さんが運動神経の良さを見込んでスポーツに強い幼稚園に入園させたの。でも、しばらくすると幼稚園に行きたがらないから理由を聞いたら「走りたいのと走らされるのは違う」って。ドキッとする話だけど、やっぱり無理やりさせられることは子どもにとって苦痛なのね。幼児期の習い事は親の自己満足って言ったけれど、この時期に習い事をしていないから育たないっていうことはまったくありません! 親は過度な期待をしたり、続けさせることに必死になるんじゃなくて、「やめることになるかも…」って思いながらやるくらいがちょうどいいの。空振り覚悟でやる(笑)。いろんなチャンスを与えたい、親は良かれと思ってやっていることが子どもにとって本当に良いとは限らない。だって私も大人になって嬉しかったのは自分の意思で簡単にやめられることだもの(笑)。大人は知恵や技術を身につけさせたい、教えて育てようとするけれど、子どもはやってみて育っていくもの。平日は仕事で忙しく、夕方まで保育園なら土日くらいは家族でゆっくりしたらいいじゃない。お稽古を詰め込むのもよいけど、家族でゆったりした時間を過ごす方がよっぽど意義があると思うわ。家の中に流れる空気が心地いいことの方がクロールができるようになることより有意義なことよ。
【 お話を伺ったのは… 】
保育施設「りんごの木」代表
柴田愛子さん
私立幼稚園に10年保育者として勤めた後、「りんごの木」を立ち上げる。〝子どもの心に寄り添う〟を基本姿勢とし、保育の傍ら、保育者や保護者向けの講演や執筆、またセミナーを通じて子どもたちの育ちのドラマを発信している。
撮影/前 康輔 取材・文/北山えいみ 編集/羽城麻子
*VERY2021年6月号「柴田愛子さんインタビュー「あなたの子どもが、いちばんすごい」」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。