【連載】神山まりあの「笑うママには福来る。」Vol.27
「僕はモデル」
ディーンは4歳。
私の仕事には0歳の時から付き添ってくれている。
撮影をしている時もスタッフさんや妹、母、夫、そしてマネージャーさんが横でベビーカーを押してくれてマミーのことをそっと見守ってくれていた。
当時のことを思い出すと、感謝の気持ちで心があったかくなる。
息子の憧れは仮面ライダーとBTS。
テレビってどうやって入れるの?と聞かれた時が懐かしい。
でも恥ずかしいしモンスターが怖いから僕は仮面ライダーにはなれない、話の終わりにはぽつりとこう言う。
目立ちたいけどシャイで怖がり、それがうちの可愛い息子だ。
ある日、親子で撮影する機会に恵まれた。
昔はお着替えが好きではなかったので心配だったが、今や憧れはTVスター、もしかしたら協力してくれるかもと期待して聞いてみることに。
「マミーと一緒にモデルのお手伝いしてみる?」
するとディーンは目をキラキラさせて、
「する!!!!」の二つ返事。
何事にもトライの精神は我が家らしい。
前夜はソワソワと「明日はモデルだよ」とベッドで騒いでいた。
こんなに楽しみにしているなんて母は驚きである。
撮影当日。
かっこいい子供用スーツを着てカメラの前に立つ息子。
不安と恐怖を忘れ、目はキリッとカメラのレンズを見つめている。
白い壁の前に立ち、ポケットに手を入れ、ジャケットを肩にかけている。
撮影前に見せたスーツ姿のモデル写真のポーズとまったく一緒だ。
表情は、BTS仕込みの憂いのある真顔。目線はカメラからずらさない。
そこからカメラマンさんの指示通りにあぐらをかいたり、表情やポーズをコロコロ変えるディーンを横から見ていて、心から感動。もう鳥肌レベル。
親バカバロメーターがもう振り切れてしまい、「かっこいい! かっこいいよ!!」と叫んでいる私。カメラマンさんも呆れていたに違いない。
もちろんプロのキッズモデルには到底及ばないが、母的には最高の思い出と息子の可能性で心が満ち溢れた時間だった。
撮影が終わったディーンの顔には自信が満ち溢れてた。
カメラマンさんにも自分から話しかけに行って、写真を見せてくれとお願いしている。
もうシャイなんかじゃない。
トライさせてみて本当に良かった。
帰り道、ディーンに聞いてみた。
「モデルのお手伝い、どうだった?」
「またやりたい」
少し沈黙してディーンは私の手を引っ張った。
「ねえマミー、ディーンは仮面ライダーになる」
また一つ成長した息子と手をつないで歩いた帰り道は一生忘れない。
◉神山まりあ
1987年2月17日生まれ。2011年ミス・ユニバース ジャパングランプリ。2016年ディーンくんを出産。2018年妊娠、出産、初めての育児を綴った著書『神山まりあのガハハ育児語録』(光文社)を刊行。インスタグラム@mariakamiyama。
イラスト/Apricots Art 編集/湯本紘子
*VERY2021年5月号「神山まりあの笑うママには福来る。」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。