家の中で一番家事をしているのは父。その背中を見て育ちました
共働きの両親と2人の姉がいる5人家族の我が家では、幼い頃から家族のなかで一番家事をしているのは父。誰よりも早く家を出て、誰よりも遅く帰宅する忙しい父が、出勤前に洗濯を干し、朝食の準備と掃除機をかけてから家を出ることが日常でした。私が小学生になった頃には、母が掃除分担表を作り、登校前に自分の担当の掃除を終えてからでないと学校に行かせてもらえなかったので、学校が大好きだった私は、必死に掃除を済ませてから登校していました。末っ子の私が中学生になる頃には分担表は自然となくなっていましたが、その後も家事は日常のひとつとして過ごしていたので、塾から帰宅すると、父と一緒に洗濯物をたたむなど、当たり前のこととして家事に参加していました。
高校での家庭科の授業で家事に対する衝撃の事実に直面
高校受験で男子校に進学。ある日の家庭科の授業でのこと、先生から「みんな、洗濯機のボタンを押したことがある人は手を挙げて」と質問されたことがありました。私にとっては当然のことでしたが、その時手を挙げた生徒が半数以下だったことに衝撃! そして、その時手を挙げていたメンバーの顔ぶれを見てみると、クラスの中でも、協調性があって面倒なことを率先してやってくれる人ばかりだったことも印象的で。この経験が〝家事ができる子はいい子に育つ〞という仮説をたてるきっかけになりました。
子どもにとって日常で得られる自己肯定感が<お手伝い>
幼児期、「すごいね」と声かけされることはたくさんあっても、人の役に立って「ありがとう」と感謝される経験は意外に少ないのではないでしょうか。大人ももちろんですが、特に子どもは相手から褒められたり感謝されることで、人から必要とされていることを実感し、自信にもつながるのではないかと私は思います。自己肯定感を持った人ほど今の社会でブレずに強く生きられる。そんな大切な自己肯定感を、幼い頃から自然に育むことができるのがお手伝いだと思うのです。
小中学生を自宅に集め家事体験からスタート
昔は当たり前のようにされていたお手伝いですが、今、周囲をみると塾やお稽古ごとが忙しくて、おろそかになっているように思えます。お手伝いをしてもらいたい親心を持つ反面、先回りして必要以上に子どものお世話をしてしまうなんてこともあるかもしれません。私自身、幼い頃から家事をしていて、いかに効率良く家事を済ませるか計画を立てたり工夫する力、忍耐力や集中力、コミュニケーション能力など、社会で必要とされるたくさんの〝生きる力〞が身についたと考えています。まさに「生きる力を家事で育む」です。身近にある〝家事〞や〝お手伝い〞を通して子どもたちに伝え、ともに成長したいという思いから、3年前に粂井塾を起業しました。 <起業後の話に続く>
粂井さんに聞いた、3~4歳の頃にやってほしいお手伝いベスト3
1 位 おもちゃのお片付け
2 位 使い終わった食器を下げる
3 位 料理のお手伝い
1 位 おもちゃのお片付け
「基本的に、まずは<自分のことを自分でできるようになる>ことが大切なため、おもちゃのお片付けのお手伝いを1位にしました。おもちゃのお片付けをする際は決められた場所にお母さんも一緒に戻すとこから始めるといいと思います!」
2 位 使い終わった食器を下げる
「食べ終わった食器を下げることに関しては、小さいお子さんでも簡単にお手伝いができて、達成感を得やすいと思います。まずは落としても大丈夫なプラスチックのものや、倒れにくい背の低いものを運んでもらうのがおすすめです。お子様専用のお盆を用意して、その上に食器を乗せてあげると、お子さんも楽しく、責任感を持ってお手伝いできると思います! 私も小さい頃はそうしていたようです(笑)」
3 位 料理のお手伝い
「早いうちから習慣づけをすることで、料理が好きな子どもになってくれるように。私は1〜2歳くらいから子ども用の包丁を使って、親に補助してもらいながらウインナーなど柔らかいものを切る練習のような、お手伝いのようなものをしていましたが、危ないと思う親御さんもいらっしゃると思います。そのため、キャベツをちぎったり、ハンバーグの種をこねたりと、まずは安全なものからお手伝いしてもらうのがいいと思います!」
取材・文/鍋嶋まどか 撮影/須藤敬一 編集/羽城麻子
粂井塾塾長
粂井龍三さん
くめいりゅうぞう 幼い頃からお手伝いが日常だった経験を通して、〝家事は人を育てる〟ことを実感。’17年高校生の時に『粂井塾』を設立。小中学生を対象にした家事講座を中心に自治体や学校への講演等、活躍の場が広がりつつある。現在慶應義塾大学1年生。オンライン講座の参加者を募集中。粂井塾公式サイト
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