「わが子は発達障害かもしれない」「最近子どもに怒ってばかり」「不登校の子の将来が不安になる」……。そんな時、育児のヒントになった本、子どもと一緒に読んだ本などおすすめの一冊を、子育て中のお母さんたちに教えていただきました。
うちの子ってどうしてこうなの…?と思った時に
『HSCの子育てハッピーアドバイス HSC=ひといちばい敏感な子』
「最近、よく耳にするHSC(ひといちばい敏感な子)の子育て本。たくさんの事例がかわいいイラストやマンガで紹介されていて、HSCのお子さんの頭の中で起きていることがわかりやすく理解できます。これまで悩んでいたこと、困っていたことなどの解決のヒントが必ずあるはず。HSCという言葉を聞いて、自分の子どももこのタイプかもと思った方、特に小学生以下の子育て中の方には、特におすすめしたい一冊です。学校の先生に配慮を求めたい場合も本書をコピーして持参すると理解してもらいやすくなることも。本の最後にある子どもたちへのメッセージもとても良いので小学校中学年以上の場合は、親子で一緒に読んで、子ども自身が自分の特性を理解するのに役立てることもできると思います」H.Kさん(小4、小1の母)
5人に1人はいるといわれるHSC(ひといちばい敏感な子)。他の人に比べ、繊細で敏感な特性を持つ子どもの親たちに向け、ベストセラー『子育てハッピーアドバイス』シリーズの著者がアドバイス。明橋大二・著 太田知子・イラスト(1万年堂出版)
『アドラー式「言葉かけ」練習帳』
「娘が1年生になったばかりの頃、慣れない生活がなかなかうまくいかない娘にイライラしてしまう自分を何とかしたくてこの本を読みました。元小学校教諭の著者が実際にクラスで利用した勇気づけの言葉かけがたくさんのシーンごとに載っています。私自身がもともとアドラー式心理学を勉強していたので、すっぽり腹落ちしましたが、はじめての方もこの本でアドラー式を学びながら、子どもに声かけをしていくときっと親子関係が少しずつ変化していくと思います。私は、今でも怒りすぎちゃったなぁと思った時にこの本を手に取って、パラパラめくって、そうだった、そうだったと思っています。1回読んで終わりではなく、手元にあると役立つ本です!」H.Kさん(小4、小1の母)
「早くしなさい!」「いつまでやっているの」ではなく、子どものやる気や自信を高める言葉かけとは?上から目線の「ほめる」より、「勇気づけ」をすすめるアドラー心理学をベースに育児中ついつい口にしがちなフレーズの言い換えを具体的な状況別に解説。原田綾子・著(日本能率協会マネジメントセンター)
子どもは発達障害かもしれないと不安になる時に
『発達障害──生きづらさを抱える少数派の「種族」たち』
「自分や家族が『発達障害なのでは?』と悩んでいる方におすすめです。著者の豊富な臨床経験に基づき、いろいろなタイプの発達障害のパターンが書かれているのでわかりやすい。“発達障害とはなにか”“発達障害の人はほかの多数の人とどんな点が違うのか”知ることができます。一般的によく言われる“発達障害の特性”とはちょっとタイプが違うようだけれども、気になることがあるという方にもおすすめ。発達障害が重複すると複雑な現れ方をしてしまい、自分や周囲の人に気づかれにくいということをグラフや表で解説しているのも興味深いんです。発達障害の診断は出てないが、生活の中で困難がありそうという時に読むと気づきやヒントが多く得られると思います。発達障害は、グラデーションの濃淡の差が大きいです。自分がどのようなことに困っているか、悩んでいるか理解して、なるべく悩みが軽減する環境や場所を選ぶことで、ずいぶん楽になる方法があると知ることができました」H.Kさん(小4、小1の母)
精神科医として30年あまり。乳幼児から成人まで、さまざまなライフステージにいる発達障害の人たちに寄り添う著者による「発達障害」解説の決定版。本田秀夫・著(SB新書)
『発達障害&グレーゾーンの3兄弟を育てる母の毎日ラクラク笑顔になる108の子育て法』
「宿題が大好きという子はほとんどいないと思いますが、発達障害児となると、他の人の何倍も取り組むのが大変です。凸凹が激しく、怠けているだけなのか、本当にできなくてツライのかがわかりづらいから。私の子どもは書字障害があるので、字を書くのに人一倍苦労していました。段取りを組んで宿題に取り組むことも苦手だし、そもそも何ができないか言葉にすることすらできない。そんな時に、ヒントをくれたのがこの本です。実際に、どんな工夫をして、発達障害児を支えていったか……具体的なアイデアが書かれています。宿題を付箋でリスト化する、終わったらポイント手帳に記入していく…親がちょっと工夫するだけで、できることがぐんと増えます。家庭で環境を整えて、子どもが苦手な部分をサポートしていく必要があると思いました。この本で紹介されている“声かけ変換表”は、不登校児や発達障害児はもちろん、子育てされているすべての人におすすめです。例えば、『早く支度しなさい!』→『5分で終われば、あと10分遊べるよ』『そんなこと言ったらダメ!』→『そうか、イヤなんだね~』など、具体的な声かけが一覧になっています。私はキッチンに貼っているのですが、伝える言葉を変えるだけで、子どもの行動は大きく変わっていきます」N.Mさん(小3、小1の母)
発達障害&グレーゾーンの子どもを育児中の現役母による「具体的な接し方のコツ」と「実践アイデア」が満載の本。「子どもを怒りすぎてしまう」「子どもが言うことを聞かない」……など発達障害のある・なしにかかわらず子育てに悩むすべての親にエールを送る一冊。大場美鈴(楽々かあさん)・著 汐見稔幸・監修(ポプラ社)
子どもの将来について考える時に
『ぼくはお金を使わずに生きることにした』
「不登校の長男の将来を考えた時、普通のサラリーマンは無理だろうなと思いました。最近は、不登校でも、特別な才能を持つ子どもに注目が集まることが多いですが、これといった特技もない息子の今後については不安になることも。ただ、教室の中で過ごすのは苦手な息子ですが、自然の中に入れば生命力がグンと増すタイプです。親としては、ちゃんと進学して就職してほしい、自立してほしいという一本道を提示してしまいがちですが、“稼ぐのが当たり前”という価値観から一歩離れるきっかけになったのがこの本です。資本主義中心の世界に疑問を持った著者がお金を使わずに暮らすことを実践した内容。とはいっても、自給自足や火起こしなどのサバイバルスキルを身に付ければいいということではありません。“お金を使わない”ことを実践する中で、孤独に生きるのではなく、コミュニティの中で自分の役割を見つけることや、持っている力を惜しむことなく提供していくことが必要になると説いています。新しい世界の中でどのようなスキルが大切になってくるのかを教えてくれる本です」K.Mさん(小4、中1の母)
1年間お金を使わずに生活する実験をした29歳の英国青年の体験記。不用品交換で入手したトレーラーハウスに太陽光発電パネルをとりつけて暮らし、生活用品は手作りと物々交換で入手。彼の実験的生活が問いかける真の「幸福」そして「自由」とは? マーク・ボイル・著 吉田奈緒子・訳(紀伊國屋書店)
『そして生活はつづく』
「星野源さんの普段の生活や子どもの頃のエピソードには爆笑してしまいます。なかでも忘れられないのが、星野さんが小学校時代にトイレが我慢できなくなり、漏らした大便の始末に困り、衝動的に壁に投げつけたら、偶然壁にナ〇キのマークができたというエピソード(笑)。今や大活躍している彼にも、うちの子みたいな時期があったんだとホッとするやら笑えるやら。星野さん自身も学校が苦手だったそうですが、不登校の息子も共感する部分が多かったようで親子で愛読している一冊です」K.Mさん(小4、中1の母)
携帯電話の料金を払い忘れても、部屋が荒れ放題でも、人付き合いが苦手でも……生活は続いていく。素晴らしくない日常を面白がろう。星野源はじめてのエッセイ集。星野源・著(文春文庫・文藝春秋)
『発達障害で生まれてくれてありがとう シングルマザーがわが子を東大に入れるまで』
「我が家も発達障害の子どもがいます。この本にある大夢君の幼い頃や小学生時代のエピソードに、我が子の忘れかけていた困った行動や不可解なこだわりや言動を思い出しました。我が子もそうですが、何でそうするのか、またはしたくないのか。当時は言葉にできないことが多かったなぁと。ずーっと後になって『あの時は◯◯◯が嫌だったんだ、だから◯◯したんだ』など、なんでもない時に話してくれたり。妙に記憶力が良くて、幼い頃の言動の解説をしてくれるという時空を超えたプレゼントをしてくれたりもします。あの時、それを知ってたらあんなに怒らなかったのに……落ち込まなかったのに……と、胸がチクリと痛みます。大夢君のお母さんは『大夢は大夢だから』と、チラリと諦めも交えつつ腹をくくってお子さんを育てていたのには頭が下がります。そうでした、そうなんです!! 発達障害児はその子なりのペースがあって、今はできなくてもできるようになる時がくることもある。思いがけず興味のスイッチが入って、グワーッと深掘りを始めることもある。親の仕事は、“子どもを丸ごと受け止める”“その子なりの成長を見守る”そういったことをひっくるめて“腹をくくる”ことかもしれません。子育ての基本に気づかせてくれる本です」Y.Sさん(小5、高1の母)
子どものありのままを、抱きしめよう。わが子をそのまま受け入れることの大切さを問う、地域初の発達障害児を育て上げた母による感動の手記。菊地ユキ・著(光文社)
取材・文/髙田翔子