※このコラムは2020年9月号(8月7日発売)に掲載されたものです。
私は日本で生まれ育ち、日本の公立高校に制服を着て通って、学校の後はカラオケ行ってバイトして、と日本のごく普通の女の子の生活を経て大人になりました。友達も日本人が多いし、感覚的にも私は基本的に「日本人」。でも、父がアメリカ人ということが、他の人から見ればアイデンティティのほぼ全てになってしまうんだなということが、小さい頃からすごくコンプレックスでした。私よりも、アメリカで育った帰国子女の子の方がよほど日本人として扱われることも多いし、「ハーフ」って外国人扱いされることが多いんです。
今アメリカではBLM=Black Lives Matterの盛り上がりで人種差別問題がさらに注目されていますが、日本では対岸の火事と思っている人が多いんだということを改めて感じています。外国人から、「日本人はゼノフォビア(外国人恐怖症)だ」と言われることすごく多いです。知人の外国人はよく「電車で隣に座られない」と言っていて、彼の横の席は大体空いてるんだとか。嫌いだからというより、単純に何となく行きづらいなどの意識が強すぎるんでしょうか。距離を置かれることが多いよってよく言っています。
私も20代半ばまでは、タレントとして頑張りたいと思いつつ、「ハーフタレント」として扱われることにすごく微妙な気持ちでいました。私が喋れば外国人の言葉として取り上げられて、「日本ってこうですよね」と言えば日本批判をする外国人みたいな演出がされてしまう。だからあえて、今みたいに髪も染めずに濃い茶色の地毛で過ごしていたし、「アメリカでは〜」とは自分からはできるだけ言わないようにしていました。「アメリカだとどうなの?」って聞かれても、「いや私に聞かれてもわかんないです」っていう笑いを取りにいったりとか。
世の中の動きが少し見えるようになり、自分自身のことも受け入れられたことで、外国人扱いされることへの怒りは鎮まって、ハーフタレントからタレントと思ってもらえるようにもなりました。それでもやっぱり、母親・離婚している・女性・36歳・タレントというよりも一番先に、ハーフが来るんだろうなといまだに感じますね。
先日、オコエ瑠偉選手が学生時代の差別の体験をカミングアウトしていたけれど、私とは10歳以上違うのに、まだ同じことが学校で繰り返されているのかと悲しくなりました。外国人だけでなく、生まれ持ったジェンダーが違う子もいるし、本当にいろんな子がいます。そういう子に対してどうクラスで接するのか、大人がどう説明するのか、いい加減マニュアルがあってもいいと思うのですが…理解のなさが、双方にとっての生きづらさにつながってしまうことを、わかって欲しいなと思います。
それに友人のクリスタル・ケイちゃんが「(ハーフだから)やっぱり歌うまいよね」などと言われているのを見たりすると、いやいやそれは本人の努力や才能だからと突っ込みたくなります。ハーフというだけで、やったことが半減する感じがあって、引っかかるし気持ちが良いものではなくて。悪気のない罪だなと思います。私自身も子どもの頃に、フィリピン人のハーフの友達に「いいなあ、いい感じに日焼けしていて!」と言って、すごく嫌がられたことが印象に残っていて。日焼け肌に憧れがあって言ったことだけれど、フィリピン人のハーフだから肌が黒いということも意識していなかったし、嫌な思いをさせたんだということが今でも忘れられない。悪気がなくても、罪は罪。わかりやすく言えば、セクハラだって「飲みの席のノリだし、おっぱい何カップって聞かれて嫌なら答えなければいいじゃん、悪気はないんだし」って言うおじさんと一緒。差別は、言った方がどうかではなくて、言われた方がどう思うかなんですよね。
ハーフや外国人だけじゃなく、親が離婚しているとか、いろんな状況で生きている子がいて、みんなそれぞれ。それに対してたとえ悪気がなくても差別的なことを子どもの前で話していないか、気をつけたいと思います。子どもは意外と聞いているし、「それって親が言っていたよね?」と思うようなことを、私も言われた経験があるから。
小さい頃から使っていたからついクレヨンも「肌色」と言いかけてしまうことが私にもあるけれど(今、うちで使っているクレヨンには「うすだいだい」と書かれていました)、みんな、肌の色も容姿も全ての色や形が美しくて、生まれたままのあなたが最高なんだよと、大人が自信を持って子どもに伝えないといけない。大坂なおみさんのアニメーションが必要以上に白く描かれたというニュースもありましたが、どうして誰も疑問に思わなかったのか不思議です。人種差別問題を対岸の火事と思わず、日本でも日常の中で起きているんだと、わかってもらえたらなぁと思います。
◉SHELLY|シェリー
1984 年生まれ、神奈川県出身。14 歳でモデルとしてデビュー以後、タレント、MCとして幅広く活躍。4歳と2歳の娘の母。
撮影:須藤敬一 取材・文:有馬美穂 編集:羽城麻子
*VERY2020年9月号シェリーの「これってママギャップ?」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。