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August 2020

2020年7月7日発売

890円(税込)

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主婦だった私が「不登校児も来られるコワーキングスペース」を作った理由<前編> 我が家の不登校体験談番外編

昨年、不登校児も行けるコワーキングスペース「ぼっとう&よはく」が東京都練馬区にオープンしました。店主は小学生と幼稚園年長の2人のお子さんを育てる主婦だったs.akko さん。不登校の子どもやその親たちも大歓迎というコワーキングスペースはいったいどんな場所なのでしょう?

 

お話を伺ったのは…
s.akko さん コワーキングスペース「ぼっとう&よはく」店主/子ども・小4、幼稚園年長

 

不登校の子の居場所がないなら作ってしまおう

 

──2人のお子さんを育てる主婦だったs.akkoさんが作ったコワーキングスペース。どんな場所ですか?

 

「ぼっとう&よはく」は去年の秋にオープンしました。約10坪の小さなコワーキングスペースです。一般のコワーキングスペースのように使ってもらうのはもちろん、不登校などの親子も気軽に来られる場所を目指しています。私自身は幼稚園児と小学生のきょうだいの母。娘は不登校ではありませんが、小1のころから学校が苦手でつらいことも多い様子でした。外遊びが大好きで活発だった私の小学生時代とは様子が全く違うのではじめのうちは娘の気持ちを理解できないことも多かったです。周囲にも不登校、HSC※1、場面緘黙(ばめんかんもく)※2などの悩みを持つお子さんがいました。学校がつらいと思う子どもや育児が大変という親たちが集まったり、情報交換したりできる場所があったら……そんな思いから始めたのが「ちょっと大変な親の会」です。

※1 HSC「Highly Sensitive Child」の略で「生まれつき人一倍敏感」という特性を持った子のこと。子どもの5人に1人はこの傾向があるともいわれ、大人にもこの特性を持つ人(HSP)がいる
※2 家庭では話ができるのに、保育園、幼稚園や学校などの社会的な場では声を出して話せなくなることが続く状態

 

──「ちょっと大変な親の会」ではどんな活動をしていたのですか?

 

知り合いに声をかけたり、Twitterを使って「ちょっと育児が大変」な親と子どもたちが話をできる場を作っていました。特に何をするというわけでもなく、集まっておしゃべりをしていただけでしたが、学校以外の子どもたちの輪が広がりましたし、親にとっても情報交換はとても重要なので、やってみて良かったかなぁと思います。それから、不登校の子どもたちが過ごせる居場所が本当に少ないということも感じていました。民間のフリースクール等も増えていますが、子どもにとって合う合わないがありますし、通学やお金の問題もあり誰でも使えるというわけではありません。だんだんと不登校の子が過ごせる場所の選択肢をもっと増やすことができたら……という思いが膨らんできました。

 

主婦が起業しようと思ったとき大変だったこと

 

──お店を始めるまで主婦だったs.akkoさん。起業にあたってハードルはありませんでしたか?

 

30代後半で結婚、出産するまで働いていましたが、それ以降は育児中心の生活になりました。家事や育児はそれだけでも重労働ではありますが、毎日その2つだけをしていると社会から離れ、視野が狭くなってしまったように感じ苦しいこともありました。育児は楽しかったのですが、子どもが成長するにつれ仕事を再開したいという気持ちも高まってきて。他のママたちには「子どもが小学生になったら楽になるよ」と言われていたので、娘が小学校に、息子が幼稚園に入るころが復職のタイミングかな?と思いましたが、実際はそううまくいきませんでした。「学校で嫌なことがあった」「宿題をやりたくない」……。娘が学校の悩みを抱えて帰ってくることが多く、家にいる私にできることはじっくり話を聞いてあげるのと宿題をみてあげることくらい。そうこうするうちにまた数年が経っていました。せっかく始めるなら長く続けられる仕事がしたい。そう考えたら資格を取得したり、正社員の仕事を探すのが近道なのかもしれません。ただ、私自身は会社での仕事が性に合うとは思えず長年フリーの立場で仕事をしてきました。人の親になったくらいで突然自分の性格が変わるとは思えませんし、ブランクの長い状態で就職するのも難しいでしょう。いろいろと試行錯誤するなかで、出産前までリフレクソロジーの仕事をしていたので、自分のスペースを持って働けたら、と思い至りました。ちょうどそのころ『しょぼい起業で生きていく』(えらいてんちょう著・イースト・プレス)という書籍を読み衝撃を受けたことも大きなきっかけです。この本は、開業資金が豊富になくても綿密な事業計画がなくても誰でもチャレンジできる起業の方法を説くもの。その他の通常の企業とは、違う視点もとても面白く、心に響きました。小規模なスペースなら自分で店を持つことも可能なのでは?と思いました。夫はフリーのエンジニアなのでコワーキングスペースなら協力してくれるかもしれない、ここで自分のやっていた人を癒す仕事もできるかも? その場所を子どもたちの居場所にもできるのでは……と「やりたかったこと」がすべて繋がり……これだ!と思ったのです。その後はほぼ勢いですね(笑)。

 

──自分でお店を作ってしまおうと思ってからの行動力がすごいですね。

 

不動産屋で物件を探し始めましたが主婦だと無職扱いになってしまうので 部屋を借りるまでは大変でした。何件か物件を見に行きましたが男性の不動産屋さんには、「夫が借主でないと審査が通らない」と言われました。借主にならないと起業する際の手続きが複雑になるので何とか自分が借主になれる物件を探したかったのです。何件かリサーチするうちに、主婦でも大丈夫と言ってくれる女性の担当者さんに巡り合え、今の物件を借りることができました。お金の面は、夫と話し合って何とか工面し、区の助成金も使いました。夫は協力的で私が夜に店番をしていたときは、夫が夜の家の当番(子どものお風呂、歯ブラシ、寝る準備、食器洗い)までやってくれたので助かりました。起業してたくさん喧嘩もしましたが、話し合ってなんとか乗り越えました。起業自体は、資金と周りの理解があれば実行しやすいと思うのですが続けていくことが大変です。私自身スタートしたばかりではありますが、仕事はとても楽しいです。とはいえまだまだ自己満足の世界ですので、もっとたくさんの人が「来て良かった」と笑顔になってくれることと、事業としてきちんと成り立つことを目指しています。学校がつらい人や、普通が苦手な人にあたたかいコワーキングスペースでありたいと思っています。

 

(後半に続く)

 

取材・文/髙田翔子

 

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