150年前に日本初の民間洋風調剤薬局として銀座に誕生した資生堂。そんな150周年の節目のCMは、時代に寄り添いながら、美を通じていつの時代も先進的な価値を私たちに投げかけ、走り続けてきた資生堂の姿を垣間見ることができます。耳に残る“君のひとみは10000ボルト”というフレーズと、それぞれの時代の女性に扮した日本を代表する俳優の視線、そして忠実に再現されたそれぞれの時代のメイクや世界観は、どんな世代の人が見ても、懐かしく、そして新しく、楽しめます。
ふとテレビから流れてきた資生堂のこのCMを見ながら、友人(3歳の女の子ママ)がこんな話をしてくれた。
「生まれてはじめて憧れたのは、お化粧をしている母の姿だったの。
お出かけ前には、決まってドレッサーの前でお化粧をする母の姿。
その姿は子どもの私の目から見ても美しく、そしてまぶしく、憧れだった。
背伸びをしたくて、母が見ていない隙にこっそりと母の化粧品で真似をして。母が大切にしていたお化粧品を台無しにして怒られてしまったこと、あまりにひどい私の顔を見て思わず笑った母の顔も、『今日だけ特別だよ』と言って塗ってくれた赤いリップの大人な香りも。私のとっておきの記憶に。
そして時が経ち、そんな私も今は母。
かつての私と同じように、今は子どものキラキラとした瞳は、メイクをしている私に向けられる。そして、母が私にやってくれたように、たまにお気に入りの赤リップを『今日は特別だよ』と少し塗ってあげる。鏡に映る自分をのぞき込んで瞳を輝かせ、とびっきりの笑顔。母も今の私のように幸せな気持ちだったのかな。
当時の赤いリップと今の赤リップ、長い時を経て同じものではないけれど、幼い頃の記憶が重なって、いつでも私のお気に入りは赤リップ。流行は繰り返され、淘汰されていくものの中でも、決して変わらない存在で、きっとこれからも受け継がれていくものなんだよね」
そして母になったからこそ共感できる当時の母の気持ちと、これから繰り返されるであろう未来の子どもたちの姿。どれだけ時代が変わったとしても、形をかえて受け継がれていく、私たちの歴史なのかもしれない。そんな世代を超えて、紡がれていく歴史がずっと続きますように。
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文/高丘美沙紀