VERY December 2020
VERY NAVY

VERY

December 2020

2020年11月7日発売

890円(税込)

Premium VERY

CONNECT WITH VERY

ベビーシッター

2月初旬のニューヨーク出張中。娘たちが「大人のともだち」と愛してやまない友人が、私のいない5日間、我が家に滞在してくれました。世間が敏感になっているベビーシッター制度。今でこそこうして友人に「ちょっとお願い」が出来るようになりましたが、子供たちがまだ未就園児だった頃は、我が家も何度かプロのベビーシッターさんにお願いしたものです。

そのベビーシッターさんとは表参道の交差点、みずほ銀行の前で出会いました。長女を乗せたベビーカーを押しながら、主人と歩いていた時のことでした。「ベビーシッターを雇えば良いのに」と、ベビーシッターにも家政婦にも慣れ親しんで育った主人だからこそ言える提案を、私は「ふーん」と聞き流していました。

表参道交差点で手書きの文字が入ったビラを配る女性。「ベビーシッターやってます」って。そんな彼女に気がついたものの、主人も私も素通りしました。でも、なんていうか、彼女の雰囲気の良さと直感で彼女のもとに駆け戻り、そしてビラを受け取りました。

0歳児専門で保育園に勤めていた東北出身の女性。電話とメールで何度かやり取りをし、初めて自宅に来てもらったとき、彼女はおもむろに玄関先でエプロンを身につけました。本当の保母さんみたいに。初めて長女を彼女にお願いした夜は、数時間後に帰宅した私と主人に向き合って座り、長女の言動全てを、私が子育てのなかで些細なことと思っていたようなことさえも丁寧に説明してくれました。そんな話しを聞きながら、なんだか私は泣いてしまいました。彼女が長女のことを心から大切に思い看てくれたことが嬉しいやら、私が長女の小さな毎日の成長に少し無頓着になっていたことが悲しいやら。感謝の気持ちと、ホッとした気持ちと、寂しい気持ちがごちゃ混ぜになって。子育ての素晴らしさを教えてくれた彼女が付けてくれた黄色い育児記録帳は、今でも素敵な思い出として大切にしています。

その後、我が家の子育てを支えてくれた彼女は、私の推薦で私の友人にとってかけがえのないベビーシッターさんになりました。そしてこの春。表参道の交差点でビラを配っていた彼女が、原宿の一角でベビーシッターサービス会社を始めることになりました。

 

仕事を続けられるという幸運、自分の予定を時々優先出来る余裕、ちょっとした夫婦時間や自分時間をもてる贅沢。そんな些細なことが初期の子育てにおいてどれだけ救いになるか。それを理解してくれる保育制度とベビーシッター制度、そして世論が、今回の事件で押しつぶされないことを願わずにはいられません。

クリス-ウェブ 佳子YOSHIKO KRIS-WEBB

2011年から専属モデルを務める。モデル業のほか、ラジオでのトーク、本誌巻頭エッセイを執筆し、書籍化するなどマルチな分野で活躍。交友関係、行動範囲はグローバルな彼女は二女の母でもある。

【あなたにおすすめの記事】

FEATURE

この記事もおすすめ